ep5. 『死と処女(おとめ)』 婚約の事実
女子が何を考えてるのか俺には1ミリもわかんねぇ。
「上野、お前水森への手紙になんて書いたんだよ?」
意味が全く分からないのでそのままの質問をストレートに上野にぶつけた。
「ま、それは個人情報ってコトよ」
気になるんなら直接、水森っちに聞いてみてもいいんじゃない?と上野は小さな笑みを浮かべる。
いやいやいや……
個人情報って何だよ、意味わかんねぇよ。
「俺は水森がお前にイジメられてんじゃねぇかと思ってたんだが」
遠回しに聞いていても埒があかないので再び豪速球の質問を上野にぶつける。
「あらら。心外ー」
あーしってそんな風に見えるんだ?と上野はオーバーに落胆するような仕草を見せる。
「そんな風に見えるも何も、そうじゃないと話の辻褄が合わんだろ?あれだけ仲の良かった水森が夢野を避ける理由が無ぇんだし」
俺がそう言うと、上野は意味ありげな視線を投げかけて来た。
「ふふっ……佐藤っちってやっぱ優しいんだね」
「何がだよ!?」
妙なコトを言って返事をはぐらかす上野に対し、ややイライラしながら俺は答えた。
「だってさ。元カノだからって佐々木っちのコト守ってあげてさ。水森っちの心配までしてくれた上に今カノの彼女も大切にしてるんだもんねぇ」
羨ましーわ、と上野はクスクス笑いながら呟く。
ん?
今なんつった?
「元カノ?誰がだよ?」
上野は揶揄うように俺を見ている。
「またまたトボケちゃってー。さっき佐藤っちが自分で言ってたじゃん?『今度俺の女に何か言ったらタダじゃおかねぇかんな!』ってさ」
は!?
「俺そんな事言った?」
「さっき廊下で男子達をボコってる時に言ってたじゃん?覚えてないのー?」
それとも照れてる?と上野はニヤニヤと笑っている。
え?俺そんな事言った!?なんだよそれ!?
「覚えてねぇ……」
やっちまった。
なんて事を口走ってんだ俺は。
「だいたいさ、佐々木と結婚の約束したのだって幼稚園の時だしそんな昔のハナシ……」
そこまで言って俺はハッと自分の口を抑えた。
「えー!ついさっきの事も忘れてんのに10年前のプロポーズは覚えてるんだ〜?」
超ロマンチストじゃない?と上野が更に揶揄うような視線を俺に向ける。
「違う、プロポーズなんかしてねぇ!」
おれは首を高速で横にフルスイングさせた。
「佐々木んちのカーチャンには世話になってて……よく飯とか食わせて貰っててさ。『俺もここの家の子になりたいなあ』って言ったら佐々木のカーチャンが『じゃあ、この子と結婚してうちの子になる?』って冗談で言ってたやつで……」
「でもそれで『えっ!じゃあ結婚する!』とかって言っちゃったんでしょ?図星?」
俺は黙った。
そうなんだよな。言っちまってたんだよな。昔。
けどそれってもう時効だろ?4歳児の戯言じゃねーか。
ノーカンだろこんなの……




