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ep5. 『死と処女(おとめ)』 無理矢理、喉に流し込まれる液体

マジかよ。

小泉の顔色がどんどん悪くなっていくのが傍目からも手に取るように判った。


「……市民病院に運ばれたらしい。直ぐに行かないと」


小泉は通勤用の痛バッグを掴むと再びドアの方に歩いていく。


「……っ!」


目眩だか貧血を起こしたのか、小泉は少し体勢を崩す。


いつもそうなんだ。こうやって小泉はしょっちゅう貧血気味になってんだよ。


小泉の友人が心配して差し入れを寄越してきたというのも今なら納得できた。


俺は小泉の腕を掴んだ。


「運転していくのか?一人でか?」


他の先生はどうしてるんだよ、加賀は?と尋ねた俺に小泉はただ首を振った。


「校長は出張中、加賀先生は他の急用があるとかで他に行ける教員が居ないんだ」


加賀は逃げたな、と俺はなんとなく思った。


受け持ちのクラスの生徒がビルから転落……


十中八九は飛び降りだろう。


夢野くるみがスタントマン志望で無茶な実地訓練やってたとか、もしくは迷惑系YouTuberとかでない限りは。


こういうのは『イジメ』が背後にあるって相場は決まってるだろ?


教師連中もタダじゃ済まないだろう。


これは思った以上にヤバい事になっている、と俺は瞬間的に察した。


こんな状況で運転しても事故って怪我人を増やすのがオチだ。


「待て、俺も行く」


俺は小泉の肩を掴んで揺さぶった。


小泉は何も言わなかった。


嫌な時は嫌だってハッキリ言うんだ、小泉ってヤツは。


だけど何も言わないんだ。


多分、心細かったんだろうぜ。俺が同行することについて否定しなかったんだからな。


何も言わない小泉の態度ってのは多分“YES”って事なんだよな。


普段は生意気な事ばっか言ってるけど、こう見えてちょっと脆いんだよ。小泉に限らずな。


行く前に校門前の自販機でエナドリでも買ってこうぜ、と言いつつ俺と小泉は裏口から校舎を後にする。


車に乗り込んでキーを差し、エンジンを掛けた小泉は無言で車を一旦降りる。


レッドブルを4本ほど手にした小泉が車に戻って来るなり、1本をこっちに投げて寄越してきた。


「何で4本?」


俺の問いに小泉は無言でプルタブを開ける。


「無事に辿り着ける気がしない」


飲まなきゃやってられないんだ、と小泉はレッドブルを一気に流し込む。


俺も同じくプルタブを開け、レッドブルを少し流し込んだ。


甘味を帯びたツンとした香りが車内に充満する。


ハンドルを握る小泉の手は少し震えていた。


「最悪、俺が運転代わってやるから安心しろよ」





それは本当に最悪だな、と呟いた小泉はアクセルを踏み、車を発進させた。




買ってきたのがモンスターでなくてレッドブルってトコがガチだよな。

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