表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

191/1123

ep5. 『死と処女(おとめ)』 通報と絶望

長い1日になる予感がする。

追い出された俺は先に登校し、後から小泉がいつも通りの時間に学校に来た。


奇妙な朝ではあったが、学校ではいつも通りの日常……そのはずだった。


放課後、俺と小泉は美術準備室に居た。


いつもなら速攻で下校するのだが今日はバイトも入っておらず、花園リセとの約束もない日だった。


朝にワーワー喚いていた小泉がおかしかったので、少し揶揄ってやろうと思って準備室に顔を出していたのだ。


いつも通りに勝手に準備室に入り、勝手に座って小泉の様子を見た。


「佐藤か。ちょっと待ってろ。仕事が全然終わらん」


小泉は顔を上げることもせず、そのままの姿勢で返事する。


いつも通り、何も変わらない俺と小泉の放課後だった。


しかし。


途中でそれは一変する事になる。


不意に校内放送が流れ、小泉が職員室に呼び出された。


呼び出しを掛けたのは担任の加賀だろう。


小泉は副担任だが、加賀によって面倒ごとを殆ど押し付けられているような状況に思えた。


まあ、俺の面倒を見る羽目になってる時点でそうだよな。


俺は担任の加賀のことが気に入らなかった。


いつも威張っててヒステリックなんだ。


けど、さっきの放送は気のせいか震えるような声だったように思えた。


「なんだ。また苦情か?うちのクラスのトラブル率ときたら……」


佐藤、お前また何かやらかしたのか?と小泉はため息混じりに椅子から立ち上がった。


「別に。俺はなんもやってねぇよ」


心当たりが有り過ぎるので俺は適当に返事する。


無免でバイク乗ってること?学校に無許可でバイトやってること?実は保護者が居なくて一人で暮らしてること?昼休憩に硬式のボール暴投して体育倉庫のガラス割ったのバックれたこと?


……家出中と思っていた母親が実はとっくの昔に死んでたこと?


どれをとってもゲームセット級の案件のように思えた。


「ウチのクラスの問題の9割はお前だからな。すぐ戻って来るからそこで先に反省して待ってろ」


小泉はそう言い残して職員室に向かった。


ドアがピシャリと閉められる音が準備室に響く。


やれやれ。説教かよ。


こんなことならとっとと帰っとくべきだったな、と思いつつ俺は準備室内の小型冷蔵庫を漁った。


冷えたブラックサンダーを見つけた俺は早速頂く事にした。


学校にこんなもん持ち込みやがって。


口止め料として貰っとくぜ、と一人で呟きつつチョコを齧る。


何個かあるようなのでもうちょっと食ってもバレないだろう。


俺が2個目のブラックサンダーに手を伸ばした瞬間だった。


「………大変なことになった」


血相を変えた小泉が準備室に転がり込むようにして戻って来た。


「なんだよ、夜中に住宅地で花火上げてたのが通報されてバレたとか?」


俺は3日前ほどに概史とフザけて夏の残りの花火で遊んでいた。


一番通報されそうな案件というとこれしか思い浮かばなかった。


深夜2時だもんな。まあ、通報もされるしとっとと逃げたんだけどさ。


多分、普段の素行からバレたんだろうな。


また校長室に呼ばれるのか、と思った俺は少しめんどくさくなった。


前回は反省文書かされたし、なかなか書けなくて苦戦したっけ。


原稿用紙3枚以上ってハードル高すぎんよ。


「で?どっからタレコミがあったん?」


俺はヤケクソ気味でブラックサンダー3個目を頬張りつつ小泉の顔を見た。


違うんだ、と首を振った小泉の顔は真っ青になっていた。


「違うって、何が?」


夜中の花火の件じゃない?


じゃあ何だろう。


やっぱバイクの事か?


小泉は少し震えているようにも思えた。


お前じゃない、と呟いた小泉は泣きそうな声を絞り出した。


「夢野………夢野くるみが……ビルの屋上から飛び降りたって………」











夢野くるみ。同じクラスの女子だった。




は??嘘だろ???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ