ep5. 『死と処女(おとめ)』 公開処刑と絶頂の回数
しかし寝起きの悪さはどうにかならんのか。
小泉は抱き枕を抱いたままベッドの上に座り、俺を睨んでいる。
てか、抱き枕カバーも二次元のイケメンキャラなのな。
コイツが前に言ってた“ゆずきゅん”か?
ま、どうでもいいんだけどさ。
「は?どういう意味だ?佐藤」
「どういう意味も何も……言ったそのままの意味しかねぇだろうが」
小泉は頭を掻き、何か考え込むような仕草を見せた。
「ふむ……で、ゴムの残数は確認したのか?」
それが減ってねぇんだよ、と俺は返事する。
「だから困ってんだよ。センセェなら何か知ってるんじゃねぇかってさ」
小泉は欠伸をしながら俺の方を見る。
「そういう現象はお前ぐらいの年頃の男子にはよくある事だ。健康な証拠なんだぞ」
気にすることはない、と小泉は若干俺を憐れんだ風な視線で見る。
「いや、だから夢精とかじゃねぇって!」
しかし俺は早朝から教師の部屋に上がり込んで何を報告するハメになってるんだろう。
我ながらこの状況が情けなくて仕方がなかった。
童貞を捨てた過程を記録に残された上にチェックまでされて、今度は夢精紛いの状況の報告か。
これって実質、射◯管理じゃねぇか。
しかも今回に至っては俺の方から出向いて報告までしている。
我ながらなんという罰ゲームなんだろうと思う。
「なんかさ、いつもみてぇに謎の文庫本って出現してねぇの?」
小泉は黙ったまま何かを考え込んでいる。
「ちょっとセンセェ、聞いてんのか?」
恥を忍んで相談に来たというのに、なんで上の空なんだ小泉は。
寝起きのコイツはマジで使えねぇな。
「さあ……?で、今回の相手はどういう女子だったんだ?」
文庫本は出現していない?
じゃあやっぱり俺は童貞を捨てて時間を戻って来た訳ではないのか?
「それが……また諸星キクコなんだよ」
俺はますます意味がわからなくなった。
いや、意味がわかってる事の方が少ないよな。毎回だけどさ。
「諸星キクコ…?」
小泉も怪訝そうな表情を見せる。
「な?おかしいと思うだろ?」
“どうして諸星キクコなのか”という心当たりの原因を説明する為に俺はマコトの件を話した。
「俺にとってマコトは今でも親友なんだ。けど、そうじゃない世界線の俺も居たんだろ?」
そうだな、と小泉が頷いた。
「その世界線の俺が酷く怒ってたというか、怒りを諸星キクコにぶつけてたというか」
なんかおかしな様子だったんだ、と俺は違和感を小泉に伝える。
けど、どこまでこのニュアンスが伝わっただろうか。
実際に諸星キクコを暴行してたのは俺、もしくは別の世界の俺だ。
だから言葉でどこまでこの奇妙な感覚が伝えられるかというのは自信がなかった。
「お前はさっき夢精じゃないと言ったな。その根拠はなんだ?」
夢である可能性の方が高くはないか?と小泉が尤もな事を言う。
いや、そうだけどさ……
ここまで説明しないといけないのかよ?察しろよ。
って言うか何だかんだ偉そうな事を言ってても小泉も処女だもんな。
こうい細かいニュアンスって伝わんねぇしピンと来ねぇよな?
俺はなんとも言えない気分になった。
やっぱりこれはセルフ公開処刑なのか?
「その……確実にイッた感じはしたのにどこにも出てなかったというか」
俺はヤケクソで答えた。
俺は何を言ってるんだろう。
いやいやそうじゃねぇ、肝心なのはこっからだ。
「俺が寝てる間にセルフでイッてるだけならいいんだよ。結構しゅっちゅうあるし。別に被害者はいねぇし」
洗濯は自分でするしな。洗い物が増えるだけだし。
だけど、と俺は続けた。
「俺が気付かねぇ間に誰かをゴム無しで暴行してたら大問題だろうが」
ここだよな、一番ヤベェのは




