ep5. 『死と処女(おとめ)』 女教師の部屋で盗撮する
小泉なら何か知ってるはずだよな……?
俺はそのまま神社に向かった。
神社の敷地内にある離れのドアをノックする。
何度かノックすると不機嫌そうな小泉がボサボサ頭のままで出てくる。
「……何時だと思ってるんだ?」
小泉の第一声はそれだった。
おかしい。
もし俺が童貞を捨てて戻って来たのなら小泉はスタンバイしている筈だ。
いつも通りに寝ていた?
じゃあこれっていつもと違う流れなのか?
しかし、見れば見るほど小泉の姿は悲惨過ぎていた。
髪は爆発しているし、パジャマ替わりの変なスウェットは毛玉だらけだし、目元には目やにも付いている。
プリントされているのはアニメのキャラ?アニメのロゴだろうか?
なんか変なデザインのスウェットだった。
遅くまでソシャゲでもやっていたのか?
明らかに寝不足そうで顔色もすこぶる悪かった。
まあ、今日に限った事ではなさそうだが。
こんなんじゃ嫁の貰い手なさそうだよなあ、と一瞬思ったが本題はそこじゃない。
「ちょっといいか?」
俺は小泉に声を掛ける。
小泉はボーッとドアの前に突っ立っていた。
いやいやいや、コイツってメチャクチャ寝起き悪いのな?
思考が働いてなさそうだったので、強引にでも部屋に上がらせて貰うことにした。
小泉はぼんやりしながら頭を掻いている。
なんだコイツ、いつもこうなのか?
小泉の部屋はいつもにも増してカオスで惨憺たる状況だった。
部屋中至る所に飾られたアニメグッズにフィギュア。
壁にはポスターやタペストリーが一面に張り巡らされている。
天井まで積まれたAmazonの段ボール箱。
中には未開封のものもいくつかあるようだった。
小泉はぼんやりとしながら抱き枕を抱きしめて再びベットに横になる。
「え!?おい!?二度寝すんな!?」
俺は小泉を揺さぶる。
スウェットのトップスが捲れ上がり、脇腹が見える。
おいおいおい。
勘弁してくれよ。
こっちは緊急事態なんだよ。
小泉の無防備な姿に俺はため息をついた。
随分なノーガードっぷりじゃねぇか。
しかし小泉、寝相がすこぶる悪いのな。
俺はふと、『切り札』だと思っていたチェキを失くした事を思い出した。
いや、あれはあれで正しい使い方ではあったんだが。
この寝相、面白いから撮ってやるか、と俺はスマホのカメラを小泉に向ける。
寝返りを打った小泉がぼんやりと目を開ける。
その瞬間、ぎゃあ!と悲鳴を上げて小泉が目を覚ました。
「は!?????佐藤!????」
お前、なんでここに、と小泉は震える声でワナワナと俺を指さす。
「なんでって……さっきセンセェがドア開けて入れてくれたじゃん」
「知らん!!!!開けてない!!!」
小泉はギャアギャアと騒ぐ。
知らんがな。
しかし、これで完全に目が覚めたようで何よりだ。
「それよりさ、ちょっと聞きたいんだけど」
俺は早速、本題に入る。
「俺、また童貞を捨てて来たかもしれないんだが」
いや撮ってねぇし。カメラ向けただけだし。




