ep5. 『死と処女(おとめ)』 いつもの処理とゴムの残数
最悪な1日のスタートだ。
前後の記憶も無ければ心当たりも何も無かった。
時計の針は明け方の四時を指し示している。
俺は掛け布団をめくり、起き上がった。
汗ばんだ身体が外気に触れ、急に肌寒く感じる。
ルームウェア代わりのTシャツは汗で身体にへばり付いている。気持ちが悪い。
何気なく敷布団を見ると、こっちも汗でびしょ濡れになっていた。
シーツを洗って布団も干さなきゃなんねぇ。
めんどくさいな、と思いつつ風呂場へ向かう。
Tシャツを脱いで洗濯機に入れた後、トランクスを脱いで洗面所に向かった。
多分汚れてるよな、手洗いしないとな。
毎回思うんだけどこういう時って後悔と罪悪感と自己嫌悪が酷いのな。
こんな場面だけは一人暮らしで良かったってつくづく思うぜ。
自分で汚した下着も自分で手洗いする訳だからな。
汚れた部分を洗おうとして、俺はある事に気付く。
あれ?
汚れてなくね?
確かに汗だくにはなってはいたが、トランクス自体は汚れてはいなかった。
俺は布団に戻り、電気を付けて掛け布団と敷布団を確認する。
どちらも汗ばんではいるが“汚れ”はどこにも見つからなかった。
俺は再び洗面所に戻る。
いやいやいや……
さっき、というかつい直前。
確実にイッてた感じがしたけど気のせいなのか?
リアルすぎる夢?
じゃあどうして?
まさかな、と思いつつ俺は再び部屋に戻り学ランのポケットを漁る。
銀色の缶を取り出し、蓋を開ける。
恐る恐る残数を確認する。
4個。
確かに缶の中には4個のゴムが入っている。
小泉に貰った時のデフォルトが6個。
花園リセで1個、諸星キクコで1個使ったから残数は4個で間違いなかった。
童貞を捨てて時間を戻って来た訳ではない?
いや。
“使わなかった”なら残数は減っていなくてもおかしくない。
さっき見た光景は無理矢理な暴行そのものだった。
だったらゴムを使っていなくても不自然ではない。
あれは本当に俺なのか?
復讐していた?
マコトを失った腹いせに?
そんなにマコトが好きだったのか?
“別の世界線”の“もう一人の俺”の姿だと言うのだろうか?
俺は首を振った。
考えたくもなかった。
マコトを失った事がそれほどまでに深い絶望だったと言うのだろうか。
だからといって、この手段は絶対に間違ってる。
だけど、あの光景はなんなんだ?
結局、復讐を果たしたからあの結果なんじゃねぇのか?
じゃあやっぱり俺は諸星キクコを……?
考えれば考えるほど訳がわからなくなる。
俺は風呂で熱いシャワーを浴び、制服を着て身支度を整えた。
確かめてみないといけねぇよな。
もし俺が記憶がないままにゴム無しで誰かを暴行してるなら、もう何もかもがおしまいだと思った。
もし本当にそうなら、もう残数をカウントする方法は使えねぇ。




