ep5. 『死と処女(おとめ)』 結合という名の白昼夢
おいおいおいマジかよ。何だよこれ。ヤッたのかよ。
俺は目を見開いた。
暗がりの中、目の前に見えるのは見慣れた天井だった。
全身が汗まみれなのが自分でも理解った。
身体中の毛穴から汗が吹き出しているかのようだった。
汗ばんだ身体に布団が纏わり付いて気持ち悪い。
薄明かりの中、俺は記憶の糸を辿る。
夢か?
これは本当に夢なのか?
『眠っていた』という意識はない。
『たった今』『この瞬間』まで『誰か』と『何か』を話していたような。
身体に残る快楽の余韻が強烈な恐怖のようにも感じられた。
何だこれは?
わからない。
まさか俺は、また時間を戻ってきたのか?
童貞を捨ててか?
自分自身の身体、下半身の疲労感にも似た虚無感がそれが夢ではない事を物語っていた。
どうしてなんだ?
俺は『たった今』『ついさっき』の光景を思い出した。
褐色の少女。
あの黒ギャル、諸星キクコだった。
若干面倒くさい性格ではあったが、悪い人物には思えなかった。
それなのにどうして俺はあんな事を?
さっきの行為、あれは明らかに暴行だった。
相手に対する気遣いなど何もない、文字通りの暴行。
時間を戻した事によって諸星キクコは御月レイジと別れる事なく平穏な暮らしを送っているはずではなかったのか。
何故、今更もう一度引っ張り出してきてあんな事を?
脳裏に諸星キクコの露わになった白い胸がフラッシュバックする。
汗ばんだ肌の感触。
擦れる粘膜の音。
夢にしてはリアル過ぎた。
そもそも俺は童貞なんだよ。
記憶も意識もいつも飛んでいる。
だからこんな光景なんて見た事ないし実践した事もない。
その筈なんだ。
俺の身体に残る生々しい感触。
ついさっきまで横に諸星キクコが居たかのようなリアルさだった。
ベッドの上で激しく突き上げられ、上下に生き物のように揺れる胸。
待って、胸ってあんなに揺れるものなのか?
俺は自分が見た光景を信じられずに居た。
それに。
セッ◯スってどんなもんだろう?ってずっと思ってた。
概史とマコトと3人で何度かAVは観た。
その度に漠然と“こういうものなんだろうな”みたいなイメージはあった。
だけど、さっきの光景はなんだ?
何もかもが思っていたものと違っていた。
きっと俺はセッ◯スに対して夢を見すぎていたのかもしれない。
乙女ゲームや少女マンガの世界に憧れてる女の事を笑えねぇ。
俺もセッ◯スって行為に幻想みたいなものって抱いてたんだな。
あれは内臓だった。
思った以上に内臓。
それがさっきの夢とも現実ともつかない行為への率直な感想だった。
肉というより内臓。
内臓の中を掻き分けて侵入して行くような行為。
ぬるりとした粘膜と粘液。
突き上げた先にはコツコツとした硬い感触の何かがあった。
あれって何なんだ?
判らないし知らない。
けど、今まで考えたこともなかったけど子宮も内臓だもんな。
俺は他人の内臓の中に入って行ったのか?
生暖かい臓器を掻き回して突き上げる。
それはただの夢だと言うにはあまりにも生々しい感触だった。
いっつも記憶がないのに何で今回はあるんだよ?




