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ep5. 『夜間非行』 羊を数えても夜は終わらない

え?なにこれ?

少年は少女を組み敷いていた。


少女はその胸を上下させ、必死の形相で抵抗する素振りを見せている。


なあ?と少年は少女に冷たく問いかける。


「満足か?俺から大事なモン奪ってよ?」


少女は答えない。


少年の声は本気だった。


深い怒りを湛えた視線はいつも以上に鋭く、感情を隠そうともしていなかった。


中高一貫のお嬢様校の制服。


白いセーラー服の緑色のリボン。


少年はそれを乱暴に引き千切る。


やめて、と少女は震える声を絞り出す。


「なんでだよ!?なんでアイツにあんな事したんだよ!?」


少年が強い力でセーラー服を上部に引っ張るとスナップが弾ける音がした。


少女は絶望的な表情でその音を聞き、悟った。


少年は本気なのだと。


「お前のせいだろ!全部!何もかも!」


少年は力任せにセーラー服を奪い取るかのように少女から引き剥がす。


アンダーウェアと少女の健康的な身体が露わになる。


「お前、自分が世界で一番可哀想だと思ってるんだろ!?」


自分が可哀想なら他人に何をしてもいいって言うのかよ!?と少年は語気を荒げる。


短いスカートに少年が手を掛ける。


掴まれたスカートのホックは千切れ、包装紙のように剥がされていく。


小さめのアンダーウェアを隠すかのように少女はその下半身を捩る。


「お前さ、本当の意味で他人の気持ちなんか考えた事なんてないんだろ!?」


少年は少女の肩を掴む。


「いっつも自分の事ばっかりだよなあ!?自分自分自分自分…!」


「そうだろ!?世界で一番不幸なのが自分!他人の痛みなんか想像すらしねぇだろ!?」


「お前は確かに可哀想だった。けどな!だからって他人に何をしてもいい権利を得た訳じゃねぇだろ!?」


「今更謝っても遅ぇんだよ!?もう元には戻らねぇ!何もかもだ!」


「お前が盗ったのはコバルトブルーの絵の具じゃねぇ!アイツの信頼だよ!踏み躙った挙句に全部壊したんだろ!?」


返せよ、と少年は低く静かに呟く。


「マコトを俺から奪ったのはお前だろ」


少女の小さなアンダーウェアは引き摺り下ろされ、左足首にシュシュのように留まっている。


「俺には何もない。親も、家族も、友達も」


アイツだけだったのに、と少年は深く絶望したように吐き捨てる。


「俺からこの世界の全部を奪って壊したのはお前じゃねぇか」


少女は怯えた瞳で少年を見上げる。


震えて歯がカチカチと鳴っている音が静かな部屋に響く。


「返せよ」


少年は少女の眼を覗き込みながら呟く。


「俺とマコトはあのままの暮らしで幸せだったのに」


少女は涙目で口を動かす。


擦れて声は出ず、少年には何も届かない。


「被害者面して他人の痛みには気付かないフリしてるんだろ?」


少年は少女の両膝を掴み、持ち上げる。


少女は全身の力で身を捩り、必死で抵抗の意思を見せる。


やめて、と少女は小さく懇願する。


「ごめんなさい、アタシが全部悪いの」


涙声の少女の言葉に少年は更に激昂する。


「お前、いつもじゃねぇか!?いつもそうだろ!?」


「自分だけが悲劇のヒロインのつもりかよ!?そうやって謝ったらなんでも許されるって思ってんだろ!?」


少年は昂った怒りを少女の身体の中心部に躊躇なく打ち込む。


刺されたような痛みが少女を貫き、絶叫が周囲に響く。


何かが裂けていく嫌な種類の痛みが少女の全身を駆け巡る。


「マコトはどうなるんだよ!?ずっとお前のこと信じてたアイツを裏切ってよ!?」


少女の唇が微かに動くが何も聞こえない。


涙を流す少女の顔を見た少年は憤怒の感情を更に増幅させた。


細い少女の身体に何度もその腰を強く打ちつけた。


裂傷と擦過傷の激痛は後悔となって少女の身体に刻まれる。


「痛っ……!」


耐えられない苦痛と少年の感情を受け止め切れず、少女は絶叫し哀願する。


「許して……」


ごめんなさい、だからもうやめて、と少女の喉から搾り出された言葉は少年を満足させることは出来なかった。


「もう何やっても遅ぇんだよ!全部壊れた!お前が壊したんだよ!」


少年は更に激しく少女の   を突き上げる。


内臓が蹂躙され、突き破られるかのような痛み。


ナイフで掻き回されるような感覚に少女は身体を仰け反らせる。


「痛い!もうやめて!お願い!お腹が破れそう!」


生命の危機すら感じさせるような激しい行為に少女は狂ったように身体を拗らせた。


少女の悲鳴だけが少年を安堵させた。


文字通りの復讐。


復讐?


そこまで考えて少年はふと我に返る。


何のために?


誰のために?


自分が組み敷いている少女、その身体がベッドの上で震えていた。


何だこの光景?


少年は戸惑う。


身体は少年の意思とは無関係に激しく動き、腰を打ち付けている。


「え?」


少女の褐色の肌は汗ばんだまま、少年の身体と結合し生々しい音を立てていた。



俺はどうして、と思ったところで放たれた弾丸のように身体の制御が効かなくなる。


全身の全てのエネルギーと温度が流れていくような、罪悪感に似た快楽が少年の全身を貫く。


一気に体温が低くなったかのような感覚。


世界の全てが赤く染まった気がした。













気付くと少年は、汗だくのまま自宅の布団に横たわっていた。








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