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ep4. 「暴かれた世界」 半裸の密室 その②

俺なんか信用できなくて当たり前だよなぁ?

「まあそうだよな。出来ねぇよな。何もかも」


オタク男のお陰で脱出できただけで儲けものだというのに、どうしてだか俺は嫌な気分になっていた。


俺のことは信じられなかったんだろ?


大事なことはなにも教えてくれなかったじゃねぇか。


「俺みてぇなのと一緒に居るとセンセェもロクな目に遭わねぇじゃん?」


もう無理に俺に構うことなんかねぇだろ?今日だって……と言いかけた時だった。


俺の言葉を遮って小泉が声を荒げた。


「卑屈になるのはよせ、佐藤」


そういう事は口に出すもんじゃない、と小泉はいつになく真剣なトーンでミラー越しに俺を見た。


「なにがだよ?」


「自分を過大評価しまいとする心掛けは立派だがな。謙遜も過ぎれば卑屈だし、それも通り越せばただの傲慢でしかない」


傲慢。


傲慢だってのか、俺が?


小泉の発言の意味が解らず、俺はしばらく黙った。


よく覚えておけ、と前置きしてから小泉はこう言った。


「卑屈さも傲慢も、限度を超えたものは周囲への暴力と変わらない」


は?


なにがだよ?


意味がわからない。


「自分自身が純粋無垢な善人、謙遜出来ている利口な人間だと思い込んでる分余計にタチが悪いからな。この手合いは」


だからお前はそうなるんじゃない、と小泉は念押しするように付け加える。


「まあ確かに私も言葉が足りなかったし、お前に対して説明してなかった部分もある」


その点は済まなかった、と小泉はまばたきしながら呟く。


ミラー越しに小泉の顔は見えるが表情までは読み取れない。


「言ってなかったと思うが九石(さざらし)さんはスエカ婆ちゃんのお孫さんで、私の所属するオカルト研究サークルの先輩でもある」


え?


「スエカ婆ちゃんのお孫さんって……センセェは孫じゃないみてぇな言い方じゃね?」


ん?と小泉は首を傾げる仕草を見せた。


「それも言ってなかったか?スエカ婆ちゃんは別に私の祖母という訳ではない」


は?


「自分の婆ちゃんでないのに家に上がり込んでたんか?」


結構、自宅みたいな感覚でくつろいでたじゃん、センセェも。


「まあ、血縁関係は無いんだが子供の頃から孫同然に可愛がって貰ってたからな」


なんだなんだ、意味がわからない。


で、あのオタク男がスエカ婆ちゃんの孫?


サークルの先輩?


「サークル?」


サークルってのがピンと来ない俺は小泉に聞き返す。


「まあ、オカルト研究といっても都市伝説とか廃墟訪問とか雑多なジャンルを扱っていてな」


趣味のクラブ活動や同好会みたいなものだと思ってくれていい、と小泉は説明する。


なるほど。


今回の神社の件はオカルト的な側面もあるし、廃墟スポット的な意味合いもあったってことか?


「でもさ、じゃああのオタク男も俺の呪いの事とか知ってんの?」


正直、童貞を捨てたら時間が戻るとかあんまり他人に知られたく無いよな…


うーん、と小泉は考え込むような様子を見せる。


「スエカ婆ちゃんがどこまで話してるかは判らんが……少なくとも“お前が忌み子だ”ってことは知ってるな」


肝心な内容まではこっちから話してはないからなんとも、と小泉は微妙な表情を浮かべた。


ふーん。


「じゃあ別にセンセェの彼氏とかじゃねぇってこと?」


当たり前だろう、と小泉は間髪入れずに否定する。





「私の推しも彼氏も二次元にしかいないからな!」


なるほど、違いねぇ。

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