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ep4. 「暴かれた世界」 セッ◯スしたら殺される部屋 その②

え?死んでた?

なんだよそれ?


小泉は袴からスマホを取り出すと二枚のお札の写真を撮った。


「……良かった。かろうじて濡れてなかったようだ」


え?巫女の袴ってポケットとかあんの?


どっから出したよ???


「バイト中にソシャゲやろうと思ってな。移動ポケットを袴の下に付けてたんだ」


手帳型ケースだったおかげで内部まで浸水してなかったようだ、と小泉はホッとした表情を浮かべた。


は!??


移動ポケットってなんだよそれ。


さっき袴のスリットから手を突っ込んだ時になんか妙に硬いものに当たるなとは思ってたが……


困惑している俺を尻目に小泉とオタク男は話し込んでいる。


二人だけで話を進めるんじゃねぇよ。クソが。


「……じゃあやっぱりこのままは出られないって事ですか」


小泉が困惑したような表情を浮かべる。


は?どういう事だよ??


せっかく座敷牢の外に出たのに俺たちは謎の足止めを食らっている。


こうしている間にも水位はどんどんと高くなっていく。


「なんで逃げねぇんだよ?!そろそろやばくねぇか?!」


俺は二人に脱出を促す。


いや、と小泉は首を振った。


「このままこの場を立ち去っても私とお前は術式の影響下にあると思う」


「何それ?死ぬの?」


すぐには死なないかもしれないけど、とオタク男が口を挟む。


「二人とも衰弱してじわじわと命を削られていくかもしれないね」


知らねぇよ。意味わかんねぇ。


「まあ、この『セッ◯スしたら出られる部屋』そのものが罠だったという事だ」


何せ向こうはお前の能力を知った上でここに閉じ込めて来たわけだからな、と小泉が頷く。


は?


俺に『童貞を捨てたら時間を戻ることが出来る』っていう呪いがあるって解っててここに閉じ込めた?


わざとセッ◯スさせるのが目的だったって事なのか?


そう言われたら確かに理屈としては納得できる。


あの狐面、デスゲームの主催者気取りのアイツが俺の能力を把握してるなら閉じ込めたりって確かに意味ないよな。


その上で男女ペアで座敷牢に閉じ込めるなんて“どうぞセッ◯スしてください”って言ってるようなものだ。


「じゃあどうやったら逃げられるんだよ?」


小泉はしばらく考え込む様子を見せた後、口を開いた。


「身代わりになるものを置いていくしか無いな」


簡易なものでいい、とにかく何かが必要だ、と小泉は周囲を見渡す。


「髪の毛とか…爪とかでもいいんだけど」


オタク男も頷く。


爪って言っても爪切りなんてねぇし、髪の毛?切れってのか?


そういやナイフあったっけ、と俺はポケットに手を突っ込む。


ナイフを探してゴソゴソとポケットを弄るうちに生徒手帳が転がり落ちる。


「おっと」


水面に落下しそうになった生徒手帳をギリギリの所でキャッチする。


生徒手帳から何かがはみ出ていた。


「おい、それだ、佐藤!」


小泉が叫びながら生徒手帳を引ったくる。


「は?なんだよ?」


小泉は生徒手帳の最後のページを開いた。


そこには俺と小泉がメイドカフェで撮ったチェキが挟まれていた。


「……チェキ?そうか、写真なら身代わりの品としては打って付けだ!」


オタク男もそれに反応する。


時間がない、ちょっと借りるぞ、と小泉は俺のポケットからジャックナイフを抜き取る。


言うが早いか、小泉はナイフで自分の左の中指を少し刺した。


指から出た少量の血をチェキの裏に付ける。


「佐藤、お前もやれ!」


意味がわからないまま、俺も同じように左の人差し指を少し刺し、その血をチェキの裏に付けた。


小泉は再び俺からナイフを引ったくる。


そしてチェキを座敷牢の中の壁に押し当て、その上からナイフで刺した。


“黙ってろよ”と油性ペンで殴り書きされた写真。







それはさながら、あのデスゲームの主催者気取りの狐面への宣戦布告のようでもあった。


ナイフをブッ刺して写真を壁に固定すんのって、なんかロックだよな。

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