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ep4. 「暴かれた世界」 セッ◯スしたら出られる部屋 その⑧

それだけの理由で?

どういう意味だ?


俺は小泉の顔を見た。


真剣そのものだった。


冗談で言っている訳ではなく、ガチだった。


俺がガキだからダメだったって事なのか?


そんな理由で死ぬハメになってんのか?


なんだか滅茶苦茶ムカついて来た。


いや、ムカつくなんてレベルじゃねぇな。


なんで俺まで死ななきゃなんねぇの?


どうせ死ぬならその前にこの女を殺してやろうか。


一瞬、俺の脳裏にとんでもない考えがよぎる。


小泉は水に浸かったまま仰向けになっている。


水は勢いを増して座敷牢の中に流れ込んでくる。


数分後には俺たちは溺死しているのは確実だった。


溺死って苦しいよな。


そうだ、絶対に苦しい。


俺の母親は俺のためにその命を使ってくれたのにな。


母親がしんどい思いして全てを投げ出してまで守ってくれた命はここで消えるのか。


もう何もかもがどうでも良くなった。


俺は天国で母親に会えるだろうか。


いや、俺は地獄に落ちるのかもな。


きっとそうだな。


じゃあ、コイツも地獄側に道連れにしないとな。


俺は小泉の上に馬乗りになった。


「……なんだ?」


小泉の意識は朦朧としているのか、か細い声で俺を見上げる。


◯すのも殺すのもあんま変わんねぇよな。


それは本質的には同じことのように思えた。


いや、違うか。


寧ろ対極にある?


そうだよな。


命を産み出す行為と命を終わらせる行為。


生と死はワンセットだもんな。


じゃあ、これは割と間違ってねぇんだな。


俺はゆっくりと小泉の首に手を掛ける。


……佐藤?と小泉が小さく俺の名前を呼ぶ。


小泉の身体は水に浸かってすっかり冷え切っていた。


もう半分くらい死人なんじゃねぇか?


そんな風に俺には思えた。


ひんやりとした首に手を掛けて力を込める。


小泉が俺の手に掌を重ねる。


小泉が身悶えるようにその呼吸を荒くする。


でも溺死よりはマシだろ?


すぐに終わるんだからさ。


苦しさからか紅潮した表情の小泉が俺の顔を見上げる。


僅かに身体を捩らせようとするが、俺が全体重を掛けているので動くことは出来ない。


コイツを殺した後は俺はどうなるんだろう。


小泉の首を絞めながらぼんやりと考える。


一人でひっそり後を追うんだろうな。


間もなく溺死か。


短い人生だったな。


来世はガチャでノーマルくらいは当てたいよな。


別にSSRとかSRなんて求めてないんだ。


普通でいい。


普通の生活を送りたいだけなんだ。


もううんざりなんだ。


何かに巻き込まれるなんてのは。


俺は小泉の首に掛けた手の力を更に強める。


しかし、その前にふと思い出した事があった。


たった今、小泉に不意打ちで喰らわされたヘッドバットと局所蹴り。


あれは滅茶苦茶な反則だった。


まだ額も痛いし局所ももっと痛い。


死ぬ前にリベンジしてやらないと気が済まなかった。


死んでも死にきれない。


女には金的ってのは無いからせめて、頭突きだけでも喰らわしてやらないとな。


俺は小泉の顎を持ち上げ、その額に自分の額を押し当てた。


小泉にされたように、一度当たりを付けてから全力でヘッドバットを喰らわす。


……そのつもりだった。


紅潮して潤んだ瞳の小泉の顔が俺を見つめていた。


超至近距離。


俺は一瞬、どうしてだか動きを止めてしまった。


え?


俺って何をしようとしてたんだっけ?


動きを止めてしまったせいでさっきまでの思考が全部吹き飛んでしまった。


なんだ?これってどういう状況?


動きが止まってしまったままの体勢で俺と小泉は見つめ合っていた。


小泉の唇が僅かに動く。





小泉は俺に何かを伝えようとしていた。


殺される前に遺言でもあるのか?

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