ep4. 「暴かれた世界」 流れていく異国の神々
捨てられるってのはさ、人間でも品物でも悲しいものだよな。
「ん?龍踊か?」
俺が獅子舞を触っているのを見た小泉がふと口にした。
「は?」
なにそれ、と俺は小泉に聞き返す。
「佐藤、お前の学年も来年は修学旅行で長崎に行くんじゃなかったか?」
長崎の代表的な祭りの一つでな、中国の雨乞いの儀式が伝えられたのが由来らしい、と小泉も獅子舞を軽く撫でる。
「え?“じゃ”って蛇の事?龍???」
俺は驚いて獅子舞をもう一度よく見た。
確かにコイツは獅子というよりドラゴンに近いかもしれない。
よく見たらツノらしきものもある気がした。
だから青龍神社なのか?
確かに、どこか和風っぽくない濃い顔立ちをしているようにも思えた。
大陸から伝わった儀式??
ここって内陸部の山の中じゃね???どういうルートで来たんだよ。
コイツも何か秘密があるのだろうか?
俺は更に周囲を見渡した。
天井にチラチラと光が見える。
何かを反射しているような光?
鏡か何かがあるのか?
俺は足元を凝視する。
今にも踏み抜いてしまいそうな朽ちた床板の隙間から何かの光が見えた。
床の下に何かあるのか?
反射した光はゆらゆらとゆらめいている。
この神社の下に水が流れている?
水面が光を反射し、床板の隙間から天井にその合図を送っている。
「なあ、この床の下になんかあんじゃね?」
俺は小泉に目配せする。
小泉も床板の隙間から見える光を確認し、頷いた。
「下に入れる通路があるんじゃないのか?」
よし、探すか、と俺と小泉は一旦外に出る。
神社の本殿の床下空間って結構スペースがある感じだよな。
野良猫が子猫を産んで育ててるイメージだ。
タヌキか何かがねぐらにしててもおかしくないな、と思いながら神社の本殿裏をグルリと回る。
床下に続く入口や階段は見当たらない。
かがみ込んで横や裏から突入しようと思ったが、獣害防止のためか柵状の木製バリケードで覆われているため入れそうもなかった。
俺は敷地内をもう一度見渡した。
小さな建物、ミニマム神社のような建造物が目に入る。
「いっつも思うけどさ、神社の敷地にあるミニチュア建物みたいなのなんなん?」
俺はなんとなく小泉に聞いてみる。
「ああ、末社だな。祠とか摂社とも言ったりするが」
神様のフランチャイズというか、他所の神様の多重影分身みたいなものだ、と小泉はよくわからん説明をした。
「なんだよそれ、神様って忍術使えんのかよ」
よくわからんが、ミニマム神社も調べてみたが出入り口は発見出来なかった。
仕方ないな、と呟いた小泉の手にはいつの間にか斧が握られていた。
「は?なに持ってんだよ?どうするつもりだ?」
車から持ってきたのか?
物騒なモン持ち出しやがって。
ビビった俺を尻目に小泉は腹を括ったような表情で呟いた。
「床板を破壊する」
おいおいおいおい、いいのかよ?




