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ep4. 「暴かれた世界」 銀行強盗

最悪なドライブだ。

「他人に自分自身のことを話す時というのは、少なからず主観が入るものだな」


運転席の小泉は独り言のように呟く。


「だが、自己保身の為に相手を貶めたり傷つけたりするような言動というのは自分のことでなくても嫌なものだ」


助手席の俺は隣の小泉を見た。


なんで巫女の着物を着て運転してるんだろう。


「センセェ、それってどういう意味?」


さあな、とだけ小泉は返事して少しの間黙った。


俺はぼんやりと窓の外を眺めながらエナドリを飲んだ。


っていうか、車内でアニソン流すのやめてもらえないかね。


これから母親と対面だというのに電波ソングをリピートされたら頭がおかしくなりそうなんだが。


キンキンとした甲高い声が車内に鳴り響く。


アニソンにしてもせめてもうちょっとマシな選曲は出来なかったのだろうか。


最悪なほど今の状況にはミスマッチだった。


なあ佐藤、と小泉がやっと口を開いた。


「これから何が起こったとしても、誰がどんなことを話したとしてもお前は大丈夫か?」


それは妙な質問に思えた。


どうしてそんなことを聞くんだろう。


「なあセンセェ、この前からなんか意味ありげな事ばっか言ってね?」


なんか知ってんのか?と俺はミラー越しに小泉の顔を見た。


小泉は表情を変えなかった。


「これから何が起こるかなんて知っちゃいない」


小泉は小さく答えた。


じゃあなんで、と言いかけた俺は目に飛び込んで来た窓の外の景色に絶句した。


廃墟の神社とは聞いていたが、車は廃村のような場所を突き進んでいた。


“打ち捨てられた村”とでも表現すべきだろうか。


俺たちが住んでいるエリアからは想像もつかないような風景だった。


ホラーゲームか何かに出てきそうな崩れかけた民家をいくつか通り過ぎる。


崩れ落ちた土壁が気味の悪さを加速させていた。


崩れかけた木造家屋というのはどうしてあんなにも不気味なんだろう。


役目を終えた電線は途中で切れて地面にだらりと垂れていた。


『全てが朽ち果てている』としか表現できないようなエリアだと思った。


こんな場所で母親が暮らしている?


最寄りのコンビニやスーパーまで車で1時間はかかりそうな気配すらした。


世捨て人の趣味の自給自足生活か、指名手配犯が潜伏してるとかよっぽど特殊な事情じゃないとここでは暮らさねぇんじゃねぇか?


あり得ない。


道路も草が伸び放題になっていてどこまでが道路なのか側溝なのか全く分からない。


脱輪でもしたらおしまいな気すらした。


少なくとも普通の人間が住む場所じゃねぇ。


電気も水道もガスも今は通ってなさそうだった。


少なくとも俺はゴメンだ。






こんな場所に居るなんて俺の母親は銀行強盗でもやらかしたのか?


だとしたら随分とロックじゃねぇか。

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