ep4. 「暴かれた世界」 生殺しプレイから逃げたい
知ってた定期。
俺が最悪だって?
うん、まあ今まで意味わかんねぇ最悪な目に遭ってきたしな。わかるぜ?
童貞を捨てる度に記憶消されて時間を戻された挙句に行為の内容全記録+副担任が閲覧済みっていう究極ド変態プレイに付き合わされてるもんな。
もう生殺しじゃんこんなの。
マジで最悪だよな。
「そんなの最初から分かってることじゃねぇか」
マジで今更じゃねぇか。
「……まあ、お前がそう思うのも無理はないが、そうじゃあない」
小泉の言葉を受けて婆さんが口を開く。
「呪いじゃ言うても色々あるけぇのう。そんなかでもぼれぇ大変なんがあんたの呪いじゃ」
こぎゃあに強いもんは今までおらんかったけぇ、きょうちゃんも困っとるんよ、と婆さんは首を振った。
「意味わからんけど、他の忌み子はここまで悲惨じゃねぇってこと?」
俺は白飯を完食し茶碗を置く。
「結局みんな最後は死ぬんだから悲惨じゃない忌み子なんか居ないんだがな」
小泉も茶を啜りながらうまい棒のシュガーラスク味を齧る。それ俺のじゃん。
「婆さんが助かったんだろ?じゃあ俺もなんとかなんねぇの?」
なんとかしてくんね?と俺は婆さんを見る。
これ以上の公開プレイには俺のメンタルが耐えられない。
いや、確かに謎の文庫本のアレは俺じゃねぇ。断じて俺じゃねぇんだが。
記憶もないし俺ではないが俺に似た別の誰かだ。
しかし多分このままだと俺は今後も醜態や失態を小泉に晒し続けるハメになる。
うん……まあ、と小泉からは歯切れの悪い返答が返ってくる。
「スエカばあちゃんの呪いが解けたのは私の祖父の力による所が大きくてな」
センセェの爺さんか。
「じゃあ爺さんに頼んでくれよ」
小泉はちゃぶ台の上に視線を落とす。
「まあ……そうしたいのはやまやまなんだがな」
最初に言ったかもしれんが祖父はもう亡くなっている、と小泉は小さく呟いた。
確かに序盤でそんな事を言っていたような気もする。
「じゃあどうするんだ?センセェの爺さんがもう居ないなら他に呪いを解く方法を誰か知らないのか?」
俺は食後に再びココアシガレットを咥えた。
「スエカばあちゃんなら何か知ってるかとも思ったんだがな、呪いを解く手順そのものは知らないみたいなんだ」
台所に引っ込んだ婆さんが今度はモナカを持って来た。
田舎の老人ってのは大体こうなんだよな。常にサービスがフルスロットルだ。
これ以上食えねぇと思ったが甘いものは別腹だ。
ありがたく頂こうと手を伸ばしたところで小泉に制止される。
「さっきから食い過ぎだ馬鹿者」
「まあまあ、食べさせてやりゃあえかろうが。今よう食べんかったら持って帰りんしゃあ」
持ち帰りアリなのか。それはありがたい。
婆さんはニコニコとして俺を見ている。
「あんたぁよう食べるねぇ。素直そうなええ子じゃけぇ、色んな人に好かれるんじゃねぇ」
婆さんは俺の顔を真っ直ぐに見る。
「ほいじゃけぇ余計に寂しいじゃろうに。あんたを大事に思うたもんは飛ばされるけぇほんまに可哀想じゃのう」
ん?
どういう意味だ?
俺に絡んだヤツは飛ばされる???
は?初耳だが?




