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ep4. 「暴かれた世界」 耳打ちと罰ゲーム

このオムライスって冷凍なんか?

コーラとハニーバタートースト、ケーキセットを俺たちの席に運んだ小泉は無言のままで他の客のテーブルに移動して行った。


せっかくだから何か話すべきだったのかもしれないが、少し気まずくなってタイミングを完全に失ってしまった。


空腹だった俺は控えめなサイズのオムライスを2個完食した。


メイドカフェってトコは食いモンにボリュームが無いんだなって思った。


これだったらもう一個頼んでも良かったろうな、と考えつつハニーバタートーストを齧る。


これも量が少ない気がした。


「まあね〜。ここはメイドさんを愛でる場所だしね〜。フードやドリンクは添え物でしょ〜?」


佑ニーサンは上機嫌でメイド達を眺めている。


よくも俺らをダシにしてこんな店に連れて来やがったな、と思ったが空腹が満たされたのでそれはどうでも良かった。


愛でるっつっても出てくるのは小泉じゃねぇか。


オマケにすこぶる愛想も悪いと来ている。


こんなテンションでよくこんな店で働けたものだな、と俺はぼんやり思いながら遠くの席の小泉を眺めた。


30代くらいだろうか。小泉は小太りの男の接客をしている。


常連なのか、小泉と親しげに喋る男は熱心に何か語っている様子だった。


小泉もニコニコと相槌を打ち、時折笑い声も聞こえた。


初めて見る小泉の表情だった。


いつも学校では眉間に皺を寄せ、険しい顔をしているくせにここではこんな顔をする事もあるのか?


俺らのテーブルでは鬼神のような顔だったのに。まあそれは俺らが悪いんだろうけどさ。


ケーキセットをフォークで突つきながら俺はぼんやりと小泉の様子を眺めていた。


っていうか、ケーキセットのケーキも小さいのな。


もう一個頼めば良かった。全然足りねぇよクソが。


小泉は何の話をしてるんだろう?


もしかしてああいう男がタイプだったりする?


俺の視線に気付いた小泉は小太りの男に何か耳打ちするとこちらへ向かって来た。


「佐藤、あんまりこっちにガンを飛ばすんじゃあない。仕事がやりにくいだろうが」


小泉は苦々しげに吐き捨てる。


いや、それがメイドの態度かよ。


「ん〜。そういえば、チェキまだ撮ってなかったよねぇ〜?」


佑ニーサンが思い出したように呟く。


小泉は舌打ちするとキッチンにスタッフを呼びに行く。


態度悪ぃな、オイ。


俺たちは小泉とチェキを撮ることになった。


なんだこの罰ゲーム感は。


佑ニーサンはアイドルの撮影会とかでよくある構図の「お互いに片手ずつ出してハートを作る」的なポーズで撮っていた。


概史は謎のテンションでニヤニヤとしていた。


まあコイツは謎のサブカル小僧だからな。こういうノリの店自体が嫌いじゃ無さそうだった。


しかし、冷やかしのつもりでチェキを注文した俺はどうすればいいか戸惑ってしまった。


なんだこれ。どういうポーズが相応しいんだよ。


ボーっとしてると訳のわからないままシャッターを切られた。


カメラ目線でない俺とカメラ目線の小泉。


意味不明な構図のチェキがカメラから排出される。


小泉は手慣れた様子で一枚ずつに落書きを施していく。


概史と佑ニーサンのチェキにはいかにもと言ったメイドらしいデコレーションが施されていた。


俺のにだけ『黙ってろよ』とだけ黒マジックで乱暴に殴り書きされていた。脅迫状かよ。圧が強過ぎるだろ。


意味がわからなさ過ぎて笑ってしまった。


面白い戦利品を手に入れた俺はそれをポケットにしまった。






しかし、その時の俺はこれから全部がひっくり返るような事件が起こるとは夢にも思ってなかったのだった。





メイドカフェって何が楽しいんだろうな?

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