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ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 女子中学生と強制、致傷罪

嘘だったらどれだけ良かっただろう。

結末が分かり切った話を聞くのがこんなに辛いものだとは思わなかった。


俺は黙ったまま、諸星キクコの次の言葉を待った。



「……その車はどんどん山の方に向かって行くの。気持ちとは裏腹に車の中ではウーハーから重低音の曲が流れててさ」


「こんなにいい人で楽しそうなカンジになってるのに、空気読めないような事ととか言い出せなかったワケよ」


俺らの住んでる地域はクソ田舎なんだけど、クソ広くて移動には車必須みてぇな地域なんだよな。


都会みてぇに電車とかほぼ無ぇし、あっても一時間に一本とかなんだよ。


だから必然的に移動は車になる。俺らみたいな中高生は別な。


18以上だと大半が免許とか車とか持ってると思うぜ。


諸星キクコが不用意に車に乗ってしまったのって馬鹿じゃねーのって思う奴も居るだろうけどよ。


こういう半端な田舎の地域ならではの特殊な事情も背景にあんだよ。


だからそういうのも含めて慎重に聞かなきゃな、って思うんだよな。


諸星キクコはぽつぽつと話す。


思い出したくねぇ事だろうしよ、無理はしなくていいとは思うんだが俺は止めなかった。


俺に話す事で整理できる気持ちがあるかもしれねぇ。


俺はただじっと諸星キクコの話す言葉を静かに聞いた。


「走ってる途中でさ、”キクコちゃんて彼氏いんの?“ って聞かれたからさ。モチロンちゃんと”居る“って答えるわよね」


「”じゃあエッチとか好きな方なん?“て聞かれたからこっちも ”そういうの彼氏が好きじゃないからさ。しないの“ って答えた」


本当のことだもんね、と諸星キクコは少し視線を落とした。


「そしたら ”えーじゃあキクコちゃんまだ処女なん?可哀想ー“ って言われてさ」


「その時初めて『処女って可哀想なの?』ってなんかわかんなくなっちゃって」


「 ”エッチすんのメッチャ気持ちいいよ?俺らなんでも教えてあげるからさ。彼氏さんにしてあげなよ“ って言われてさ」


「その時なんとなく、『ああ、そっか、アタシが頑張ったらいいだけの事だったのかな?』って思えてきて」


「……市内からちょっと走ってさ、15分くらいでもうドライブコースの山の中なの。山の中腹かな。自販機のある駐車スペースに車は止まって……」


諸星キクコは首を振った。


「わからないの、自分でもどうしてあんなことしちゃったのか」


「最初は自転車を直してくれたあの男の人だった。後部座席の方に来て、よくわからないまま気が付いたらキスされてて」


「男の人がどんどん服の中に手を入れてくるの。でも意味がわかんなくて」


「ホントに何してるかよくわかんないの。向こうは進行を把握してるのにアタシだけ何もわかってなくて」


「服の下に入ってた手は下着にも……」


「もうよせよ!」


最後まで黙って話を聞こうと思っていたはずなのに、気付いたら俺は話を中断させてしまっていた。


話す相手が違うんじゃないのか、と俺は思わず口に出してしまう。


「お前が真剣にこの事を話さなきゃいけないのって俺じゃねぇんじゃねぇか?」


俺は諸星キクコの顔を見た。


何が正しいかなんて俺にはわからない。


どうすれば良かったか、なんてこともわからない。


でも、少なくとも俺よりも御月の方にこれを聞く権利があるんじゃないのか。


この出来事に関して、泣いたり怒ったりしていいはずだ。アイツならきっとそうするだろう。


諸星キクコはただ、わからない、とだけ呟いた。


諸星キクコはその後の経過をざっと俺に話した。


よくわからないまま一人目の男に処女を奪われ、二人目の男とも同じ事をした。そしてよくわからないまま家の近くで車から下ろされ、何事もなかったように帰宅したという事だった。


最初ね、全然実感わかなくて、と諸星キクコはポツリと言った。


「ああ、アタシとうとう処女じゃなくなったんだなぁぐらいに思ってたんだけどさ」


「一晩中寝て起きたらメチャクチャ怖くなって」


「次の日にレイジに会ったらすっごい後悔したの」


「アタシは誰でもいいからセックスしたかったワケじゃなかったんだ、ただレイジが好きなだけだったのにって」


なんであんな事しちゃちゃんだろう、それだけ呟くと諸星キクコはまた大粒の涙を膝に落とした。


「……アタシって最低だよね。ホント最低」


アンタの言う通り身も心も汚いよね、と、あどけなさを残した素顔の黒ギャルは顔を覆った。


そうじゃねぇ、と俺は間髪入れずに否定した。


「そうじゃねぇだろ、オメーは何もかも間違ってる」


諸星キクコは動きを止め、目を見開いて俺の方を見た。




お前さ、お前が判断して自分の意思で選んだ結果って思ってるかもしれねぇけどさ、と俺は力を込めた。












「こんなんどう考えても強姦じゃねぇか」








対等じゃねぇだろ。

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