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ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 ハイエースと助手席の見知らぬ男

どういう意味?

一瞬、俺は何か聞き間違えたのかとも思った。


……え?


どういう意味だ?


俺はチラリと諸星キクコを横目で見た。


いつも威勢のいい強気な黒ギャルがとてつもなく小さく、幼く感じられた。


さっき人目を憚らず大声で泣いたせいか、ガッツリしたメイクは殆ど落ちていた。


その素顔は年相応、いや逆に実年齢より幼くも見えた。


「……アンタも子どもじゃないんだし、意味くらいわかるでしょ」


諸星キクコは俯いたままで呟く。


そうだな、と俺は頷いた。


「確かにもう子どもじゃ無ぇよな」


けど、と俺は続けてこう言った。


「大人でも無ぇだろ?」


諸星キクコは黙っていた。


前後の流れからなんとなく諸星キクコの身に起こった出来事の想像は付いた。


全部本人に喋らせるというのは酷にも思えた。


「……別に言いたくなけりゃ無理する事ぁ無ぇぜ?」


相手がどうとか今更聞く気にもなれなかった。


聞いたところで俺に何かができるとも、御月との仲を修復してやれるとも思えなかった。


俺はただ黙って諸星キクコの次の言葉を待った。


今日は帰るならそれでもいい。


帰りたく無いならそれでもいい。


俺はただこの黒ギャルの横に座っていた。


思うようにしたらいい、ただそれだけだった。


10月の風に乗せて沈黙が流れる。


秋の入口の夕方は涼しく、沸騰して混乱した感情を冷やしてくれるかのようだった。


諸星キクコはポツリポツリと言葉を発し始めた。


俺はただそれを黙って聞いていた。






「……いつだったかな、夏休み頃だったと思うんだけど自転車のチェーンが外れて困ってた事があったんだよね」


「その時、大学生くらいの男の人が助けてくれたの。テキパキ直してくれてさ。メッチャいい人だなって思った」


「……その後少し経ってさ、大雨が降ってる日にアタシ、傘持ってなくてさ。駅からダッシュで家まで帰ろうとしてたの」


「そしたらさ、車がアタシの横に止まってさ。見たらあの時の男の人なの」


大雨だし濡れちゃうでしょ?送るから乗りなよ、って言われてさ。


前回助けてもらった事あったからゼンゼン知らない人って訳じゃないでしょ?


いい人って知ってたし、確かに凄いゲリラ豪雨だったから既にビショ濡れになってたんだよね。


だから乗せてもらったの。その車に。


その男の人、一人だと思ったら助手席にもう一人居てさ。


でもこの男の人の友達かなって思ってその時は深く考えなかったの。


後部座席に乗ってさ、家はどっちって聞かれたからちゃんと答えたの。車ならすぐの距離だったから。


そしたらさ、車が急にスピード上げて家の前を通り過ぎてさ。


“キクコちゃんだっけ…?せっかくだからちょっとドライブして行かない?”って言われたの。


アタシよくわかんなくてさ。“どこに行くの?”って聞いたのよ。


そしたらその男の人と助手席の人がニヤって笑ってるのが見えたの。


なんとなく嫌な予感がしたけど、車は家の近くを走ってたしさ。そんな心配するような事でも無いなって思ったんだよね。


あの時の自分を全力で止めたいわ。


車の外の景色がドンドン山の中に向かってるのが見えて……








ここまで聞いて、予想できている結末に俺は戦慄した。なんでこんな事になってしまったんだろうと心の底から思った。




今からでもいい、釣りだと言って欲しい。

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