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ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 性癖の開示

わりとメンチ切るよな。

俺は諸星キクコの肩に掛けた手に力を込めた。


「何よ!痛いでしょ!?」


諸星キクコが俺を睨みつける。


俺も諸星キクコを睨みつける。


俺達は何故か公園のベンチでメンチを切り合っていた。


俺はどうしてもコイツを許せなかった。


さっき俺が延々と語っていた映画のタイトルは『トレインスポッティング』なんだがそんな事はどうでもいいんだ。


俺は昨日、一緒に映画を観た御月の事が頭から離れないでいた。








柿を貰った翌日。


諸星キクコと対峙せねばならない事は感じていたが、もう少し御月と話したくなった俺は寺を訪れていた。


今日はどうしたんだ?という御月に対し俺は“柿のお返しに梨を持ってきた”と答えた。


「……まあいい、お茶でも飲んで行くか?」


御月が部屋に招いてくれたのでありがたくその誘いを受けた。


コイツの事はもちろん、事情をもう少し掘り下げた方がいい気がしたからだ。


話しているうちに何か判るだろうか?


しかし、何をどういう風に聞けばいい?


御月はまたしても冷えた麦茶とカットした柿を部屋に持って来てくれた。


あれ、もしかして俺ってメチャクチャ柿が好きって思われてね?


しかし俺は御月に何を質問して何を知りたいって言うんだろう。


どうしていいかわからない俺は柿を食べながら考え込む。


御月は満足そうにそれを見ている。


違う、そうじゃねえ。


柿はそこまで大好物って訳でもねぇんだ御月。


何でもいいから聞かねぇと。


でもなんて?


俺を見て何か察したのだろうか。


何から切り出すべきか思案していた俺に御月の方から話題を振ってくれた。


「……佐藤はどんな映画が好きなんだ?」


好きな果物の次は好きな映画の質問か?


トレインスポッティングだ、とすかさず俺は答えた。


そうか、あれは音楽もいいからな、と御月は納得したように頷いた。


「……疾走感もあるし、佐藤らしい好みだな」


御月は俺に向かって少し笑顔を見せた。


同じ映画を好きだと知った俺は余計に目の前の男に親近感が増した。


「……佐藤に観せたい映画があるんだが観ていかないか?」


御月がボソリと呟く。


[好きな映画][好きな本][好きな音楽]を人に言うのってある種の性癖の開示に近いものがあるよな。


その人間の人となりがストレートに反映されてるっつぅか。


でも好きな映画の話題を振って来たって事は少しは俺に心を許してくれてるって思っていいんだろうか。


おう!観る観る!観せてくれよ!と俺は多少オーバーに返事してみせる。


そうか、と御月はコクリと頷いた。


DVDプレーヤーの電源を御月が押した。


ネトフリやアマプラでなくてDVDで買ってるタイトルなのか。


じゃあこれってメチャクチャ思い入れあるんじゃね?


これはいよいよ只事じゃねぇモンが来るぞ、と俺は身構えた。


まさかAVか?AVなのか?


いやいやいやいや。


これ、ガチでやべえ性癖の開示だったら俺はどうリアクションしたらいいんだ?


待て待て待て、どこまでなら俺は耐えられる?


コスプレ系?ナース?巨乳?OL?CA?JK?この辺りならまだ全然大丈夫だ。


むしろ個人的にはチャイナドレスとかだったら有難い。


けど、絶対無理な系統だったらどうすればいいんだ?


流出モノ?ソフトSM?監禁?露出プレイ?痴漢?


俺、なんか痴漢系って無理なんだ。なんでかわかんねぇけど。


理不尽なのが見てて腹立つから?なんか卑怯なのって嫌なんだよ。


演技だって解ってても無理だし、あと女が泣くのが無理だ。


ああ、多分俺は泣いてる女が苦手なんだな。


しかしどうしよう、俺は御月の性癖がどんなモノであったとしても受け止められるだろうか。


御月は俺に同意を求めているのだろうか?


途端に不安が胸をよぎる。


DVDが再生され、画面にタイトルが映し出される。


御月が俺に観せたいのって…?


予想だにしないとんでもない文字列が俺の目に飛び込んでくる。









『 す み っ コ ぐ ら し 〜 と び だ す 絵 本 と ひ み つ の コ  〜 』









俺は言葉を失った。


カウンター入れられたみてぇな衝撃とダメージ。


俺に観せたいのってこれなのか。


俺は御月の顔を見つめた。


御月はコクンと頷いた。


マジか。


否応なしに本編がスタートする。


予想だにしないタイトルに唖然としていた俺だったが、眺めていると次第にストーリーに引き込まれていく。


淡い色彩の世界が画面上に展開され、観る者を吸い寄せていく。


途中からさっきまでの流れをすっかり忘れ、画面に釘付けになる。


そして物語終盤。


意外な人物が助けに来る激アツ展開に俺は打ちひしがれていた。


弱いんだよこういうの……!


気付けば俺は泣いてしまっていた。


人の家に来て映画観て泣いてるとかメチャクチャ気まずかった。


しかもこんなほのぼの系のアニメ映画だぞ?


だが、ふと横を見た俺は絶句した。


御月は俺以上に号泣していた。


訳がわからなくなった俺も涙が止まらなくなった。


意味わかんねぇだろ?俺だってわかんねぇよ。






男二人、俺達はずっと部屋で泣いていた。


まさかとは思うが人外が好きだという可能性もあるよな…ハイレベルだぜ…


続きが気になったらブックマーク登録と評価頼むな。


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