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★ep10.『夢千夜』聖母と道化、その支配人 第十四夜
脱がせるのはよそう。
俺はそう判断した。
間に合わんだろ、この状況じゃ。
いつ上野や水森達が戻ってくるとも限らない。
見つかっても終わりだが時間が戻れなくても終わりじゃねぇか。
俺はポケットの中から例のケースを出した。
ジャラジャラとチェーンの音が部屋に響く。
トップのツマミを捻ると蓋が開く。
重い質感の金属のケースの中にはいつもの物が入っている。
平常運転だ。
そう。
何も深く考えなくていい。
終わらせればいい。
終わらせさえすれば全部片付くし上手くいくんだ。
金属ケースからビビットな色合いのパッケージが宙を舞いながら無機質に落下する。
早くしなきゃ。
気ばかり焦る。
小泉が刺すような視線で俺を見つめているのに気付く。
やりたくないんだろう。まあそうだよな。当然だ。




