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★ep10.『夢千夜』聖母と道化、その支配人 第九夜
小泉が俺の意図を理解しているっていうのは伝わってくる。
「……!」
小泉は睨みつけるように俺を見る。
そんな目で見るなよ。仕方がないんだ。
「ステージの照明が故意に落とされて水森が怪我をしてる。このままじゃライブなんか出来るわけない」
お互いに何をすればいいのか解ってるんだ。
そうだろう?なあ小泉?
「わかってるんだろ?」
俺がそう言うと小泉は後退りしながら首を振る。
「……こんなところで出来る訳ないだろう!?」
小泉は既にステージ衣装を着た状態だ。
確かに、普通に考えたらこんなの正気の沙汰じゃない。
ステージ衣装を着たアイドルとプロデューサーが楽屋で実行していい筈なんてない。
「鍵は閉まってるし、事故のいざこざでスタッフもメンバーも全員向こうに行ってる」
今しかないだろ?と俺は小泉の肩を掴んだ。
「見つかるぞ、絶対……」
小泉の顔は真っ青だった。
まあそうだな。こんなの誰かに見られたらその時点で俺も小泉もおしまいだ。




