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★ep10.『夢千夜』聖母と道化、その支配人 第八夜
「ちょっ……みんな待っ───────────」
皆に続いてステージに向かって駆け出そうとする小泉の手を引っ張る。
「……っ!?」
小泉がビクリとした様子で俺の顔を見つめる。
「─────────もうわかってんだろ?」
そう、俺が口にしなくても────────────小泉はこれからのことをよく解ってる筈なんだ。
「そうだろ?センセェ」
俺は小泉を楽屋に引き込むとドアの鍵を掛けた。
カチャリという安っぽい金属音が室内に響く。
「……!!」
そう。
楽屋なんて言っても地方都市の公民館の会議室の一室なだけだ。
新しくもなんともない、ややくたびれたただの会議室。
出された長テーブルとは別に、奥の方には折りたたんだパイプ椅子と長テーブルが積まれている。
ふれあい祭りみたいなイベント以外では普段は使われている形跡はない部屋だ。
だけど。
今この瞬間この場所は─────────────ご当地アイドルの楽屋で──────俺達はプロデューサーとアイドルって関係なんだ。




