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★ep10.『夢千夜』聖母と道化、その支配人 第四夜
何処かから悲鳴が聞こえた気がした。
「……!?」
その瞬間、目の前で何が起こったのか俺には理解できなかった。
何かが激しく床に衝突する音。
目の前に飛び散るガラス片。
飛び交う怒号。
場違いな方向を照らすスポットライト。
飛び散る鮮血。
それから。
目の前で横たわる水森唯。
「おい!大丈夫か!?」
音響担当のスタッフ────────────体格のいい男性が水森唯の身体を抱き抱えている。
え?
何が起こった?
状況が把握できない俺はただ固まっていた。
「誰か!!救急車早く!!」
男性スタッフの叫び声が周囲に響き、悲鳴が連鎖反応のように上がる。
そこで俺はようやく────────────ぼんやりと現状を理解した。
“頭上からライトが落下した”
そう、落ちてきたんだ。
水森唯は青白い顔のままピクリとも動かない。
まさか────────────死んだって言わないよな?




