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ep10.『聖母と道化、その支配人』カボチャの馬車
それからの時間は一瞬だった。
メンバーは皆、不安を抱えた日々だっただろう。
しかしそんなことを全く見せず、いつも通りに練習を欠かさなかった。
そしてやって来たふれあい祭りステージのリハーサルの日。
舞台本番の前日だ。
メンバーは皆、いつものレッスン着で現場に到着していた。
この前見せてもらった、例のステージトラックが祭り会場に鎮座していた。
お姫様達を高みに連れて行ってくれるこのトラックはきっとカボチャの馬車なんだろう。
舞台の幕があがれば馬車は舞踏会の行われる城に姿を変える。
そう、舞台は既に整えられている。
あとはお姫様達のドレスだけなんだが─────────────
「ねぇ、どうすんのよプロデューサーっち……」
上野が不安そうな声で俺に言う。
まあそうだよな。
今まで俺、メンバーに何も言ってなかったし。
時刻はリハーサルまであと30分に迫っている。
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お待たせしました!佐藤くん!」
振り返るとそこには───────────八宇さんと、見覚えのある面々が息を切らせて立ち尽くしていた。




