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ep10.『聖母と道化、その支配人』心当たり
衣装無しでステージに立つなんて出来ない。
安物の衣装を着てステージに立つなんて言語道断だ。
だとしたらどうする?
俺は改めて切り裂かれ汚された衣装を見た。
どうする?
どうすればいい?
ふと視線に気付くと─────────────メンバー全員が俺を見ていることに気付く。
そうか、俺がプロデューサーだもんな。
皆、俺の指示を待ってるんだ。
けど、そうは言っても衣装が天から降ってくる訳でもないもんな。
人の手が必要なんだ。
そう、衣装を縫える技術のある人物───────────────
俺はそこまで考えてふと、ある人のことを思い出した。
──────────あの人なら、もしかして。
俺はスマホを持ち、楽屋の外に出た。
時間は22時のちょっと前だった。
こんな時間に掛けるなんて非常識ではあるんだが──────────
数回コール音が鳴り、スマホの向こうからいつもの声が聞こえた。
「おう、佐藤か。どうしたんじゃ?」




