ep10.『聖母と道化、その支配人』景色
「……!」
元祖スタア☆レモネイドのファイナルライブ─────────────
水森唯の祖父はどんな気持ちでこれを用意したんだろう。
「みんな。ちょっとここに立ってみないかい?」
水森唯の祖父はにこやかにそう提案する。
「え!あーし達、上がっていいんです?」
いち早く反応したのは上野綾だった。
「……」
諸星キクコは何か言いたそうにステージを見つめて棒立ちしていた。
「ちょっとだけだから……ね?」
躊躇している諸星キクコの手を引っ張っているのは水森唯だった。
「え、ええ……」
佐々木と小泉も続いてステージに上がる。
「わあ……!」
メンバーから思わず歓声が上がる。
俺もついでに上がらせてもらったが───────────────ステージから見える景色って別世界なんだな。
ビビって足がちょっと震えそうだ。俺は皆にバレないように深呼吸する。
本番当日─────────────新生スタア☆レモネイドが見る景色はどんなものなんだろう。
「今日はレッスン着だけど、本番当日はステージ衣装でここに立つんだものね……」
佐々木が感慨深げにそう呟く。
本番の日は目前まで迫っている。
準備は何もかも万端、あとはコンディションを整える事ことぐらいだろうか。
俺達はステージから降り、改めてトラックを眺めた。
俺達はこの規模のステージにふさわしいライブを観客に届けることが出来るだろうか。




