ep10.『聖母と道化、その支配人』サプライズ
電話の主は水森唯の祖父だった。
ちょっと外に出てみてくれないか、と言われた俺は通話しながらドアを開け外に出る。
視界に飛び込んできたのは───────────大型トラックのステージだった。
「!!!!!!????」
クソ田舎のこのエリアではまず見る機会のない代物だ。
テレビや動画の中でしかお目にかかれない存在。
「な…!!!」
俺が呆然としているとステージの中央にはスマホを片手に持った水森唯の祖父が立っていた。
「ははは。驚いたかな。佐藤君」
いや、どういうつもりだよこの祖父さんは。
どえらい物を持ってきやがった。
「え、いや……どうしたんですかこれ」
度肝を抜かれた俺はそう絞り出すので精一杯だった。
「このステージトラックが本番当日の晴れ舞台だよ。少し奮発させて貰ったんだ」
いやいやいや………
これってガチのアーティストがライブとかで使うやつじゃねぇか。
地方のふれあい祭りなんかの規模のものじゃない。
俺が立ち尽くしているとボーリング場からメンバー達が次々と出てくる。
「おい佐藤、一体どうし───────────」
俺に声を掛けようとした小泉が腰を抜かしているのが伝わってきた。いや、マジで腰抜かすってこれ。
「ちょっとー佐藤っちー?」
続いて出てきた上野が絶句し、その後ろにいた諸星キクコは悲鳴を上げた。
「ひっ!???何これ!?」
諸星キクコの悲鳴に気付いた佐々木もドアから顔を出し、目の前に広がる光景を見るなり後退りする。
「……え!?」
流石の佐々木でも予想つかないよな、こんなことは。
外が騒がしい事にようやく気付いたんだろう。
最後に出てきた水森唯は──────────────目の前のステージトラックを見るなり息を呑み目を見開いた。
これって、と水森唯は掠れた声で呟く。
「スタア☆レモネイドのファイナルライブの時と同じステージ……!?」




