ep10.『聖母と道化、その支配人』スタア誕生秘話
「すごいじゃん小泉っち!!!」
上野が小泉にものすごい勢いで抱きつく。
「ちょっ……!上野!」
「へぇー☆ガッコのセンセーなのにめっちゃ頑張ったじゃんっ☆」
諸星キクコは満足げに小泉の頭を撫でる。センセーって言いながらも同級生みたいな距離感じゃねぇか。
「……凄いわね。これもプロデューサーさんの指導の賜物なのかしら?」
佐々木は小泉ではなく俺に向かってそう言った。
「いや、俺はなんもしてねぇし。センセェが自力で頑張ったんだよ」
俺がそう言うと佐々木は意味ありげに笑ってみせる。
「……それだけかしら?」
いや、と俺は首を振った。
「お前もセンセェのこと気にして差し入れ持って来てくれただろ?皆の期待に応えたいって思ったからセンセェも踏ん張れたんじゃないか?」
サンキュな。佐々木、と俺が言うと佐々木は黙った。
「……!」
照れてんだろうな。佐々木ってそういうとこあるんだよ。
「小泉先生。素晴らしい仕上がりです!」
駆け寄って来た水森唯がキラキラとした視線を小泉に向ける。
ファンがアイドルを見つめる視線に近いような──────────────いや、違う。
初代スタア☆レモネイドのDVDを繰り返し観ていた時の水森唯の目だ。
そう。今の小泉は紛れもなく新生スタア☆レモネイドのメンバーになってるんだ。
今、この瞬間。
正しい意味で──────────────新生スタア☆レモネイドは誕生したんだと俺は確信した。




