ep10.『聖母と道化、その支配人』プレゼント
小泉の表情はどこか固いように見えた。
佐々木がわざわざ差し入れを持ってきて応援してくれているとはいえ─────────────プレッシャーも感じているんだろうか。
まあそうだよな。この局面でプレッシャーを感じないなんてあり得ないもんな。
けど、さっきまでの通し稽古である程度の手応えのようなものは感じられた。
もう少し微調整さえすれば──────────皆に追いつける仕上がりになる。
そう確信出来るものがさっきまでの小泉の動きの中に確かにあるように思えたんだ。
あと必要なものってモチベーションとか気力体力ぐらいなもんじゃないか?
小泉はやれば出来るんだから自信持って欲しいんだが────────────
神妙な顔をしながらサンドイッチを頬張っている小泉に対し、俺はどう声を掛けていいものか戸惑ってしまう。
ふと、俺は自分の胸ポケットの中に何か入っていることを思い出した。
なんだったっけ?
何気なく取り出すとそれは───────────いつかゲーセンのガチャでゲットしたあいプリ∞のラバーストラップだった。
「なあ、センセェ。これ、ゲーセンで取ったやつなんだけどさ」
そう言いながら小泉にラバーストラップを手渡す。
「ゆずきゅん……だっけ?このキャラ、センセェの今の推しじゃないかもだけど───────────」
よかったら使ってくれよ、と俺が言うと小泉は心底驚いたような表情を浮かべた。




