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ep10.『聖母と道化、その支配人』最悪なタイミング
「……なあ」
大丈夫か?と小泉に問いかけるが返事はない。
相当疲れて朦朧としてるんだろうか。
「あ……た……大したことはない」
小泉は我に返った様子で小さくそう答えた。
あんまり大丈夫そうには見えないんだが。
「今日はもう終わろうぜ。センセェも疲れてんじゃ──────────」
俺がそう言いかけた瞬間だった。
小泉が目を見開き、身体を硬直させた。
「……あ……!」
そこに立っていたのは───────────────佐々木だった。
「あら。お邪魔だったかしら?」
小泉は反射的に俺から離れた。
「あっ……こ、これは別に…!」
佐々木は刺すような視線でこちらを見ている。
「こんな夜遅くまで二人きりで個人レッスンとは───────────随分と熱心だこと」
ん?
あれ?
ちょっと待てよ?
佐々木ってなんか勘違いしてないよな────────────?




