ep10.『聖母と道化、その支配人』個人レッスン
俺達は早朝と夜の時間────────────二人だけでの猛特訓を始めた。
小泉は壊滅的にダンスがダメって訳ではないってことは確信できた。
まあ、やればちゃんと出来るタイプなんだろうな。
だけどそれには────────────適切なアドバイスとサポートが必要なんだ。
闇雲にやったって成果は上がらないからな。
小泉に一曲を通しでやってもらう。
その後に俺が問題点をピックアップして小泉に伝える。
なんだかいつもとは立場が逆の補習みたいだ。
小泉が苦手な部分・つまづいてる部分の改善点を適切に指導しなきゃいけない。
厳し過ぎると本人のモチベーションが下がっちまうし、かと言って緩すぎると皆のレベルに追いつけない。
人に教えるってのがこんなに難しいものとは思わなかった。
まあ、相手は小泉だしな。多少は気も使うし。
その日の夜─────────23時前頃だった。
小泉も朝早くから学校の業務もあって相当疲れているように見えた。
後もう一曲、通しでやってから終わりにしようと告げ、小泉もそれに同意した。
曲がサビに差し掛かるタイミングだった。
「……あ!」
小泉がバランスを崩し、後ろによろけそうになる。
俺は咄嗟に手を伸ばした。
「……大丈夫かよセンセェ」




