ep10.『聖母と道化、その支配人』意外な特技
順調な前方ポジション3人であったが────────────苦戦するかと思われた佐々木もなかなかのものだった。
保健室登校というイメージとは裏腹に佐々木は俊敏な動きを見せつけた。
佐々木のステップに前方3人も動きを止め、思わず見入る。
「凄いじゃん佐々木っち!ダンスも得意だったんだ!?」
上野がすかさず声を掛ける。
……まあ、ね……と何か含みを持たせるように佐々木が答えた。
確かに佐々木が保健室登校してるのは自分専用の私室を手に入れる為のカモフラージュな訳なんだが──────────────
それにしてもなんか動きが慣れすぎてる。
(なあ、佐々木……なんかお前、ダンス習ってたか?)
俺は小声で佐々木に尋ねる。
ふふ、と佐々木は小さく笑ってみせる。
(……覚えてない?私、小学校低学年の頃からアーケードのアイドルリズムゲームのアニメにハマってたのよ)
アイドルアニメ……?アーケードのゲーム?
それってなんだっただろうか。
そういえば昔、佐々木が女児向けゲームのカードを集めていたような気がするな。
(……実はアイドルとか興味あったってこと?)
俺がそう訊くと佐々木はこう答えた。
(正解。実はこういうの、嫌いじゃないわ)
マジか。




