ep10.『聖母と道化、その支配人』約束
なんだよ、なんでこんなポジション発表で一喜一憂してんだよコイツらは。
そんなに大袈裟にリアクションするようなものなのか?
やや面食らいながらも俺は発表を続けた。
「ええと……次。青のポジション、“クール・ブルーハワイ”だが───────────」
水森唯、と名前を告げるとまたしても場内に歓声が響く。静かにリアクションできないものなのか?
「えー!!!水森っちがブルーハワイ!???」
イメージピッタリじゃん!?クールだし!!と上野がオーバーに反応してみせる。
まあ確かに。
水森ってショートカットで長身だし、クールで青系のポジションと言われたら納得するんだよな。イメージに合うし。
「……はい」
当の水森唯本人は静かに答える。
まあな。
イメージにピッタリとは言え─────────────このポジションは不本意だろうな。
複雑な思いを抱えながらも凛とした様子で受け答えする水森唯の様子に俺の心はチクリと痛んだ。
そうだよな。
手放しで喜べる状況なんかじゃない。
その気持ちは痛いほどわかるんだ。
俺は言いたいことは山ほどある。
だけど、その気持ちを飲み込みながら俺は発表を続けた。
「……最後に────────“フレッシュ・レモネイド“。このポジションに───────────」
諸星キクコ、と名を呼んだ瞬間、場内は静まり返った。
「はーい⭐︎」
軽めの返事が場内に響く。
残り三週間と少し。
俺達は無事にステージの幕を開けることが出来るのだろうか。




