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ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 二人きりで風呂に入る

なんか妙な方向に行ってるな…

どう反応していいかわからない俺は周囲を見渡した。


無数の小さな地蔵が一列に並んでいる。


水子供養。


死んだ子どもを供養する場所なのか。


御月は困惑している俺の様子を見て何か察したのか、本堂の中も見てみるか?と小さく言った。


「見せてくれよ、興味あるんだ」


俺は心にも無い返事をしてしまう。


御月に案内されて俺は本堂の中に入った。


当然ながら土足厳禁なので靴を脱いで上がる。


暗がりの中で大きな仏像のような存在が鎮座していた。


空間には線香の匂いが充満している。


線香の匂いはうちの仏壇の匂いと同じだな、と思いながら周囲を見渡した。


どこか安心する匂いのような気もした。


本堂の中に入ったからには線香を上げた方がいいのだろうか。


「なあ、線香って上げてもいいのか?」


「……どうぞ」


俺はポケットから小銭を出し、賽銭箱に入れた。


御月が横に置いてあったマッチを擦り、ロウソクに火を付けてくれた。


線香を二つに折り、ロウソクで火を付けて香炉に挿す。


なんとなく手を合わせて(呪いが消えますように)と拝んでみる。


ふと横を見ると御月が俺を凝視していた。


何か不作法なことでもしてしまったろうか。


「あ、悪ィな…俺、寺とかあんま来たことなくてよ…」


作法とか知らねぇけどすまんな、と御月から視線を逸らす。


「……驚いたな」


御月が俺の顔をまじまじと見て呟いた。


「2組の佐藤はてっきり学校一の不良だと思っていたんだが……」


こんなに信心深いとは知らなかった、と御月は感心したように言った。


「信心深い?」


家には仏壇があるし、仏壇や仏像には線香を上げるのが普通だと思っていた俺は逆にその反応に驚いた。


「え?上げるじゃん、線香って」


線香どころか他所から何か貰ったらとりあえず仏壇に供える生活をしていた俺は急に不安になった。


「ご飯炊いたら仏壇に供えるし、毎日一回お茶も供えるよな…?」


え、普通じゃないのか?と俺は御月に確認するように訊ねる。


「いや、最近そこまで信心深いのはなかなか居ないぞ?」


御月は俺の顔をじっと見るとこう切り出した。


「……良かったら晩飯、食べて行くか?」


他人から食事に誘われるなんて初めてだった。


しかも会ったばかりの面識のない人間にだ。


俺は二つ返事でその誘いを受けた。


「マジか?ぶっちゃけ腹減ってたんだ。いいのか?」


ああ、と御月は頷いた。


こいつめっちゃ良い奴じゃん、と俺は確信した。


その日の御月家の夕食はすき焼きだった。


すき焼きなんて目にするのは3年ぶりくらいだった俺はテンションが爆上がりした。


御月の祖父母?らしき人達がニコニコとしてもっと食べるように勧めてくれる。


俺は調子に乗って2回くらいおかわりしてしまった。


御月はそんな俺を不思議そうな顔で見つめていた。


良かったらお風呂もどうぞ、と祖母らしき人がしきりに勧めてくれる。


なんだかもう、ついでだしいいか、という気になった俺はお風呂にも甘えることにした。


しかしまさか二人一緒に入れと言われるとは思わなかった。


大きめの浴場を目の前にして俺は若干困惑した。


「え?ホントに二人で入んの?マジ?」


しかし、小さめの銭湯程度の広さはある浴場なので不思議と気恥ずかしさはなかった。


なんだか急に修学旅行みたいな気分になってテンションが上がった。


「お前んちの風呂、めっちゃデケえな!!!」


「……お前、なんか思っていたのと違うんだな」


肩まで湯船に浸かった御月がしみじみと呟いた。


「え?何が?」


俺は聞き返す。


「不良だからもっと悪そうな奴だと思っていたが……意外と普通なんだな」


まあな、と俺は返事を返す。


しかしそれはお互い様だったのかもしれない。


地元で一番のモテ男と聞いてどんなキザで嫌味な奴かと思ってたら意外といい奴だったし。


人間って見た目にはよらないなぁ、と俺はしみじみと思った。


「そうそう、普通って言えばよ……そういえばお前、蒙古斑ってまだある?」


「……え?」


「俺さ、背中?尻に蒙古斑があるんだけどよ。中学生になったら普通は消えてるって言われたんだ」


お前はそういうのないのか?と俺は何気なく御月の背中を見た。


御月が無言でゆっくりと立ち上がる。


俺は息を呑んだ。


背中と尻の中間地点。


俺の“蒙古斑”がある位置と同じ場所。








御月レイジには大きな火傷の痕があった。




これってどういう事だよ…


続きが気になったらブックマーク登録と評価頼むな。


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