ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜㊺
「マジで!?」
驚きのあまり思わず叫んだ俺に対し─────────小泉は静かにこう言った。
「但し、条件が一つある」
え?と俺が聞き返すと小泉はスマホを取り出した。
「条件って?」
俺がそう尋ねると、小泉は動画サイトを開いた。
突然流れる“スタア☆レモネイド”の曲。
動画サイトに唯一アップされていた古い動画だ。
おそらくファンの誰かが当時のライブ映像を勝手に上げたものだろう。
アップロードの日付は10年前になっていた。
「水森唯の母親の所属していたアイドルグループだと聞いてな。私の方も何度か見てみたんだが───────────」
ふむ。
小泉の方も多少は気にして見てくれてたんだな。
「……で、水森の母ちゃんの居た元祖の方の“スタア☆レモネイド”の方に何かあるのか?」
ああ、と小泉は頷く。
画面の向こうでは色とりどりの衣装に身を包んだ女子達が歌い踊っている。
「私にカラーを選択させろ。紫の“グレープゼリー“のポジションならやってやってもいい」
「……は!?」
カラー選択!?
なんだそれ!?
てか、そんなの俺の一存で決めていいのか!?
俺が困惑していると─────────────小泉はこう付け加えた。
「このグループの中で唯一、ウィッグを付けていたのが紫の“グレープゼリー“のポジションの子なんだ。ウィッグがあるなら人の目を誤魔化せるかもしれん」




