ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜㊸
「……ハァ!??」
少し遅い時間に神社に行くと─────────────学校から帰ってきた小泉と鉢合わせた。
『アイドルグループにメンバーとして加入して1ヶ月後にステージに立ってくれ』
って言ってみたところさっきの反応だ。
やっぱダメなんだろうか?
まあそうだろうな。普通に考えて小泉が引き受けてくれるとは思えない。
教え子の女子中学生達と一緒にステージで歌って踊るなんてとんだ公開処刑じゃないか。
「やっぱダメかー」
俺がそう言うと小泉は呆れたように呟く。
「お前な……何をどうしたら私が引き受けるって思ったんだよ」
そんなの出来る筈無いだろう、という小泉の言葉は尤もなものだった。
「まあそうだよなー。いやー。今回はさ、リセさんが絶対センセェがいいって言っててさ─────────────」
……は?と小泉が動きを止めて聞き返す。
「いやさ、さっきリセさんをスカウトしに行ったんだよ。そしたらなんかリセさんがやたらとセンセェを推しててさ」
「……?」
小泉は怪訝そうな表情で俺の顔を見る。
「そんなん俺知らないからさー。いつの間に二人とも仲良くなってたんだよ?言ってくれたら良かったのに」
「……」
俺がそう言うと小泉は黙り込んだ。




