ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 中絶と死産
黒ギャルから逃げたい。
次の日、俺は諸星キクコに見つからないように裏門を通って全く別の道で帰宅することにした。
俺は何もかもにうんざりしていた。
呪いだの女だのもう何も聞きたくなかった。
俺の気持ちなんて誰一人として気にも留めてくれないんじゃないのか。
俺は一体何なのだろう。
訳のわからない呪いとやらで俺は知らない間に女を襲うか女に襲われるかの二択しかないとでも言うのだろうか。
記憶の無いうちに婦女暴行もいきなり公園で襲われて公然猥褻もどっちも御免だった。
しかし放っておけばどちらか、或いは両方の疑いで俺は遅かれ早かれ刑務所か少年院の世話になるかもしれない。
俺は心底絶望した。
どちらも絶対嫌だった。
闇雲に知らない道を歩いているうちに俺は大きな門の前に立っていた。
ここは何処だろう。
厳しい門に掛けられた看板を見る。
『安養寺』
ここは寺なのか。
俺は少し考えた。
寺。
そうか、寺か。
中学卒業後、俺は高校に行かずに働く気でいた。金が無いからな。
しかし小泉も花園リセもこぞって“高校へは行った方がいい”と言うのだ。
そうは言ってもそう簡単に進学なんて出来ない。
だとしたら?
俺は更に考えを巡らせた。
出家するのって資格とか要るのだろうか?
或いは僧侶になるには?
絶対に男しか居ない職業や環境なら呪いも何も発動しないのではなかろうか。
もしくは修行の結果、呪いが無効化されるという可能性は?
なんとなく活路を見出した気がした俺は門の中を覗き込んだ。
「……うちに何か用か?」
不意に背後から声がした。
学生服を着た男が立っていた。
「お前、2組の佐藤か?」
声を掛けてきた男には見覚えがあった。
「お前は確か…4組の…」
4組の御月レイジだった。
そうだ、御月レイジ。
こいつ学年一、学校一どころか他校の女子にまでラブレターやらバレンタインチョコやらを貰ったりするとんでもなくモテる奴じゃねぇか。
なんで地元NO1のモテ野郎がここにいるんだ?
「うちの寺に何か用なのか?」
御月は怪訝そうな顔で俺を見る。
「え?ここお前ん家なんか?」
「……そうだけど」
地元じゃ負け知らずのモテ男の実家が寺だとは知らなかった。
「なあ、俺、寺に興味あるんだけどちょっと見てっていいか?」
自分でもビックリした。
なんで急に寺の見学とか申し込んでんだ俺。
「……いいけど」
入れよ、と御月が俺を寺の中に招き入れてくれた。
寺の敷地は想像以上に広かった。
「なあ、お前も寺の跡取りなん?修行とかするんか?」
俺は敷地内を見渡しながら御月に付いて歩く。
「……特には」
御月はあまり喋らないのか無口な奴だった。
ま、こう言うとこがクールだのカッコいいだの女子に言われるんだろうな。
イケメンはいいよな、と思いつつ俺は周囲を見る。
寺というからにはシンプルで質実剛健的な内部を想像していた。
しかし、通路や至る所がカラフルなモノで溢れ返っていた。
色とりどりの風車が無数に刺さってカラカラと賑やかな音を立てている。
周囲には菓子やドリンクといった供え物が多く置かれ、地蔵らしき像にはカラフルな帽子やマフラーでデコレーションが施されていた。
「なあ、お前んとこの寺って賑やかでカラフルなんだな」
楽しげだな、そういうコンセプトの寺なのか?と聞いた俺に御月は少し戸惑った様子で答えた。
「……佐藤、ここがどういう場所か知らずに来たのか?」
「どういう場所だって?」
一呼吸置いて御月は呟いた。
「……ここは水子供養専門の寺だ」
水子供養。
俺の背中に冷や汗が流れた。
「……中絶や流産、死産で死んだ子どもを供養する場所だ」
知らなかった……
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