ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜㉜
は───────────!?????
ピアノの発表会!??
俺と水森唯が絶句していると────────────天宮烈奈は続けてこう言った。
「それとね、くもんもあるからやすんじゃだめだって」
公文!?
公文だって!?
呆然とする俺と水森唯の目の前で神司が爆笑していた。
「ははっ……そうだよな────────公文の方が大事だからな!!あっははははっは!!!!」
気のせいか瞳孔が開いてないか?
なんかその表情めっちゃ怖いんだけど。
神司の異常な形相に気付かない様子で天宮烈奈はニコニコとしながらこう言った。
「わたしはでられないけど、お兄ちゃんたちのはっぴょうかい、たのしみにしてるよ!」
あ、いや、俺は出るわけじゃないんだけど─────────────
俺がアイドルのプロデューサーだなんて知ったらコイツは驚くだろうか。
俺がぼんやりとそう考えていると、目がガンギマリ状態の神司が竹箒を握りしめたままこちらに向かってくる。
「さあ、オレ達はこれから宿題があるんだ。天宮も公文やピアノ・バレエのレッスンで忙しいんだよ」
用事が済んだら帰ってくれないか、とガンギマリ神司は静かに俺達に圧を掛けてくる。
横に水森唯が居るから穏やか(?)にこう言ったんだろうが─────────俺だけだったら多分竹箒で殴られてただろうな。
「わーったよ。邪魔したな」
俺と水森唯は特に何の成果も得られないまま神社を後にした。
振り返るとニコニコとした天宮烈奈が無邪気に手をブンブンと振っているのが遠くに見えた。
またしてもスカウトに失敗したわけだが────────────────この調子で本当にステージの幕は上がるんだろうか。




