ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜㉖
しかし。
八宇さんの口から出たのは─────────────────予想外の返答だった。
「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいです!」
俺と水森唯は顔を見合わせた。
「え、じゃあ……メンバーに入ってくれるんですか!?」
俺と水森唯が身体を乗り出すと八宇さんはこう続けた。
「でも……ごめんなさい。八宇、今はお腹に赤ちゃんが居るんです……」
「「!!!」」
俺と水森唯は息を呑んだ。
そうだった。
なんで忘れてたんだよ!俺の馬鹿!!!!
何度か時間を戻って世界がシャッフルされているとはいえ───────────八宇さんが妊娠中なのは以前に聞いてた筈じゃないか。
俺と水森が絶句していたからだろう。八宇さんは俺達に気を遣ってこう言ってくれた。
「あの、八宇は誘って貰えて嬉しかったです!アイドルになれるなんて夢がありますよね……!」
えへへ、と八宇さんは悪戯っぽく笑う。
ああ、こんな時までなんて可憐な人なんだろう!
俺と水森唯は圧倒的なオーラと可愛さの前にコールド負けのような状況だった。何しても可愛いんだからずるいよなあ。
「八宇さんなら全国区にも進出できるって思ったんですけど、無理は言えないですもんね……」
水森唯が残念そうにそう呟くと、八宇さんはビックリしたようにこう返す。
「あなたのお母さんの所属してたアイドルグループなんでしょう?じゃあ、あなたが頑張らないと!」




