ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 婦女暴行と触法少年
急に彼女が出来たんだが。
俺は自分のスマホを確認した。
諸星キクコの連絡先が入っていた。
俺の初彼女である。
お嬢様校の黒ギャルで念願の巨乳である。
それなのに全く嬉しくないのはなぜだろう。
嬉しさが1だとしたら不安と疑惑が99といった所だろうか。
ここ最近の俺は何もかもが怖くなっていた。
花園リセの一件からである。
俺には全く記憶がない部分や期間があった。
それが恐ろしさに拍車を掛けていた。
俺は自分でも意識しないうちに目の前の女を手込めにしてしまう人間なのかもしれない。
ガチの性犯罪者じゃないか。
そう考えると世の中の女全てが恐ろしく思えてもくる。
俺は久しぶりに放課後の美術準備室へ顔を出した。
小泉は机で何かを読んでいる様子だったが俺に気付くと本を閉じ、顔を上げた。
「どうしたんだ佐藤、珍しいじゃないか?」
俺はあの一件以来、ここにも顔を出さなくなっていた。
小泉に何もかも見透かされているような気がして怖くなったからだった。
おう、と適当な返事をして俺は勝手に目の前の椅子に座った。
相変わらず美術準備室はアニメのポスターやフィギュアで溢れていた。
コイツは気楽そうでいいよな、と俺は心底思った。
飲むか?と小泉が小型冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを出してくる。
俺はただぼんやりとペットボトルを見つめた。
「おい佐藤、お前がここに来るって事は何かあったんだな?」
怪訝そうな顔をした小泉が核心を突く質問をしてきた。
小泉が謎の古文書のような本や書物をいくつか持っているのを俺は知っていた。
結局、俺がいくら隠そうとしても先回りした小泉に既に知られている可能性すらある。
だったら最初から何もかも話してしまった方が楽だと俺は思った。
「俺さ、どうやら彼女が出来たっぽいんだけど」
どう切り出していいかわからなかった俺はそのままを小泉に打ち明けた。
「ほう、それは良かったじゃないか!」
険しい表情をしていた小泉がどこか安堵したような表情を浮かべた。
俺に彼女が出来たのを喜んでくれてるのか?意外だった。
「なあ、センセェは俺に彼女がいた方がいいって思うん?」
当たり前だろ、と間髪入れずに小泉が答える。
「お前は側から見てても何だか危なっかしい所があるからな。彼女が出来たぐらいの緊張感があった方がいいんじゃないのか」
それに、と小泉は続けた。
「女の子と付き合って人間関係や人付き合いについて学んで成長出来るかもしれんしな」
俺が一番気にしていたのはそこだった。
「センセェは本気で俺が女の子と付き合っていいって思ってるのか?」
何か問題でもあるのか?と小泉は不思議そうな顔で俺を見つめた。
「なあセンセェ、一つ教えてくれよ」
俺は一番聞きたかったことを単刀直入にぶつけた。
「婦女暴行って懲役何年くらいなんだ?」
ペットボトルの麦茶を口に含んでいた小泉は盛大にそれを俺にぶっかけた。
「はあ!??」
小泉は口元を拭いながら大声で聞き返す。
「いや、こっちも気にしてくれるとありがたいんだが」
俺はそこらにあったタオルで顔を拭いた。
何だこのタオル?アニメのイケメンキャラクターがプリントされていた。(勝手に使ったがまあ仕方ないだろう)
いやいやいやいや、と小泉は首を振る。
「婦女暴行って……え?どうしたんだ?また何かやったのか!??」
そうじゃないけど、と俺は首を振った。
どうでもいいけどぶっかけられた麦茶で俺の髪のセットが乱れたのがめっちゃ地味にストレスだった。
花園リセに対して俺がやってしまった事は立派な犯罪だという自覚はあった。
婦女暴行。
時間が戻っているから花園リセが被害届を出さないにしても、もしかしたら次の相手、別の女の子にも俺は何かしてしまうかもしれない。
執行猶予が付かず実刑だとして、懲役何年くらいになるのだろう。
「なあセンセェ、俺は刑務所に行くのか?それとも少年院?鑑別所?」
俺は不安で一杯だった。
知らない間にまた誰かを傷付けていたとしたら。
おいおいおいおいおい、と小泉がメチャクチャ頭を横に振る。
「お前は“アレ”を読んでないから知らないだけなんだろうが花園リセの件はそういうんじゃないだろう?どちらかと言うと寧ろ……」
小泉は何かを言いかけてハッとした様子で口をつぐんだ。
「何だよ、どういう事だって言いたいの?」
俺は小泉を見た。
小泉は何も言わず黙っていた。
「……とにかく、お前が心配しているような事は無かったと思うが?」
小泉は目を伏せて俺に背中を向けた。
小泉の言っていることは俺にはよくわからなかった。
こんな状態で俺はどうやって諸星キクコと付き合えばいいんだろう。
もしかしたら俺は諸星キクコどころか街を歩いている一般女性にまで何かやらかすかもしれない。
そう思うと俺はこの世界の何もかもが怖くてたまらなくなってしまった。
何も嬉しくない。
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