ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜⑭
「……は………!?」
……え……!?と絶句したまま固まる御月に向かって俺はもう一度こう言った。
「アイドルだからな。美少女じゃないとダメなんだ」
そうなるとなかなかメンバー探しが難航しててな、と俺が続けると御月は頷く。
「……そうか……それは確かに……」
けどさ、と俺はズイと身を乗り出す。
「諸星キクコはその点で言うと申し分ないんだ。なにせ────────」
女子校でも下級生に慕われててファンクラブまであるそうじゃないか、という俺の言葉に御月は深く頷いた。
「……そうだな……確かに」
女性アイドルだからこそ女性ファンからの支持も大事になってくるって訳だな、と一人納得する御月に畳み掛けるように俺はこう続けた。
「そうそう!推し活ってやつ!それにさ、女性アイドルってインフルエンサーやモデル的な需要もあるじゃんか」
アイドルオタク層だけに向けて商売やってちゃ生き残れないギョーカイなんだよ!と俺がもっともらしいことを思いついたままに勢いで口にすると御月は感心したように相槌を打った。
「……なるほどな……同性である女性から見て憧れの存在であることが必要不可欠と……」
そこでだ、と俺はダメ押しでこう強調した。
「諸星キクコならそれが出来る。そう思わないか?」
うむ、と御月は頷きスマホを取り出す。
何やら素早い動きで短いメッセージを送っているようだ。
「……キクコを呼び出した。今から来てくれるそうだ」
────────────よし!
ここまではうまく行った。
諸星キクコの彼氏である御月レイジの協力を取り付けることには成功したが──────────────
肝心の諸星キクコ本人が首を縦に振るかどうか。そこが問題だよな。




