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ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜⑫

「……珍しいじゃないか。どうしたんだ?」


直前に電話を入れたとはいえ、急に家まで押しかけた俺を御月はいつも通りの穏やかな口調で迎えてくれた。


「……えっと」


そっちは確か、と水森唯の姿を見た御月は意外そうな表情を浮かべる。


「そう。同じクラスの水森唯だ。なかなか面白い奴でさ」


本の趣味とかが俺と合うんだよ、と当たり障りのない紹介をすると御月は軽く会釈をする。


「……そうだったのか……まあ二人とも上がってくれ」


御月の自室に通された水森唯は落ち着かない様子でソワソワとしだした。


無理もない。


今まで全く絡みのなかった学校一のイケメンの御月レイジの自室にいきなり連れてこられてさ、最初に視界に飛び込んでくるのがおびただしい数のぬいぐるみだもんな。


まあ、正直ビビるよな。初見だとさ。


御月レイジの『すみっコぐらし』コレクションは前回よりも更に増えていた。


寝る時も絶対一緒なくらいすみっコ大好きだもんな。


その中でも特に増えまくってたのが『とかげ』と『とかげのお母さん』のグッズやぬいぐるみだ。


『とかげ』は本当は恐竜の子どもなんだけどさ、身の安全の為に『とかげ』だという設定で暮らしてるんだ。


当然、恐竜である母親とは離れて暮らしてる訳でさ。


産みの母親と離れ離れになっている御月にはこのキャラ達がメチャクチャ刺さるんだよ。


俺も似たようなもんだからめっちゃわかるんだけどさ。


「……それで今日はどうしたんだ?」


こういうことって珍しいじゃないか、とカルピスとヨックモックをテーブルに置きながら御月は不思議そうな表情を浮かべる。


筒状のクッキーだ。これってメチャクチャ美味いんだよな。


御月の家のことだ。檀家さんや客人からの手土産やお供え物なんだろう。


御月んちはこういうのいっぱいあってスゲェよな、と感心しながら俺は早速それを口に咥える。


ん、まあ、とクッキーを頬張りながら俺は言葉を濁した。


「……あのさ、御月に一緒に観て欲しいDVDがあるんだけど」


ここにくる前にあらかじめ水森唯には了承を得ていたので、タイミングさえあればいつでも切り出そうとは思ってはいたがやっぱり緊張する。


「……DVD……?……ご当地アイドル……?」


パッケージを見た御月は更に不思議そうな表情を浮かべた。


御月の部屋のデッキにDVDをセットしながら俺は─────────さりげなくを装いながらもこう呟いた。













「……このアイドルグループのセンターの子さ、若い頃の水森の母ちゃんなんだ」


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