ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜⑦
「は??ちょっと待てよ」
……今なんつった?と俺が聞き返すと水森唯はハッキリとした口調でもう一度こう言った。
「残りのメンバーは未定なの。話が拗れちゃった以上、ダンススクールの方の生徒さんにはもうお願いし出来ないし────────」
元々がふれあい祭りの3カ月前にサプライズで急に持ち上がった企画みたいだしね、という言葉に俺はますます不安になる。
そうだよな。
この手の地域の祭りだのイベントだのってかなり前から準備するのが普通だよな?
「……ただでさえ3カ月前に急遽持ち上がった企画なのに、1カ月前になって急に白紙になったってことか?」
まあ、そうなるわね、と水森唯は申し訳なさげに答える。
「完璧に私のせいなんだけど───────────突貫工事みたいな企画でも勝算があったのは『普段からダンスのレッスンを受けているスクールの生徒がメンバーになる』っていう前提条件があったからで……」
なるほどな。
確かに、急なスケジュールであってもダンススクール内の─────────しかも、成績上位の生徒なら例え1カ月しか準備期間が無くても難なくステージをこなせるだろう。日常的にレッスンや練習をこなしてる訳だからな。
けど、今からメンバーを集めて1カ月で歌やダンスを完璧に仕上げるってのは素人には無理があり過ぎないか。
以前に24時間のタイムアタックで秋祭りを開催に漕ぎつけたことはあったが──────────
仲間内だけのパーティー的な小規模なイベントとは比べものにならない難易度だろう。
「その、スタァ☆レモネイドってのはさ。メンバーって全部で何人なんだ?」
俺がそう尋ねると水森唯はこう答える。
「初期と後期でメンバーの入れ替わりもあったけど……基本は5人体制だったみたい」
なるほど、水森唯は既に決定しているとして──────────
まず最初にあと4人のメンバーを集めるところからやんなきゃいけないってことか!?




