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ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜④

「え……」


これってさ、お前の母ちゃんの……居たアイドルグループ……だよな……?と俺が恐る恐る確認すると水森唯は頷く。


「そうよ」


なんで、と俺が絞り出すように言いかけると被せ気味に水森唯はこう言った。


「だからよ」


………?


話が全く見えてこない。


「だから、私がやらなくちゃいけないのよ」


水森唯の話はこうだった。


以前より伝説のご当地アイドルである[スタァ☆レモネイド]の復活を望む声が多く、地元商工組合やフェスティバル実行委員会の間でもその準備が水面下で進められていたらしい。


メンバーは中高生を想定していたことから、市内のダンススクール内でオーディションを行う予定で打ち合わせが進行中だったとの事なんだが───────────


「お祖父さんからその話を聞かされてね。私、居ても立っても居られなくなって──────────」


それで私が一番に立候補したって訳、と凛とした様子で言う水森唯の横顔はまるで知らない女の子のように見えた。


「……なるほど、そういう事情が」


俺はそう相槌を打つので精一杯だった。


「別にお祖父さんに無理に誘われたとか勧められたなんてことはないのよ。どちらかって言うとお祖父さんは心配の方が大きいみたいだし」


けど、と水森唯は続ける。


「どうしても嫌だったの。[スタァ☆レモネイド]を他の子に取られたくないっていう気持ちが強くて」


だからお祖父さんに頼み込んで参加させてもらう事に決まったの、という水森唯の話はごく自然なものに思えた。


さっきまでは荒唐無稽でハチャメチャ、とんでもない無茶振りにも思えたが理由を聞けばなんとなく理解は出来た。


かつて、母親の人生の全てでもあったアイドル活動。


そしてそのアイドルグループでもある[スタァ☆レモネイド]


それを他の女子に取られるくらいなら自分でやってやるというのは心情としてはわからなくもない。


「いや、事情はわかったぜ。そう思う水森の気持ちもよく解る」


でもさ、俺がプロデューサーってのは無理がありすぎないか、と俺が抗議するようにぼやくと水森唯はクスクスとまた笑った。


「何言ってるの。『絶対に売り物に手を付けない』っていう必須条件を満たせるのは佐藤君をおいて他にいないのよ」


ええ………


俺は改めてまた困惑する。














『女の子に手を出さない』なんて条件下で俺に白羽の矢が立つなんてさ、名誉なんだか不名誉なんだか───────────────








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