ep10.『聖母と道化、その支配人』スタァ誕生前夜②
そうだな。水森唯はここまの覚悟を俺に見せたんだ。
多分───────────俺を信頼してくれてのことだろう。
だったら、俺の返事は決まってるじゃないか。
俺は腹を括った。
「ま、まあ学校の文化祭の延長みたいなノリなら─────────」
俺がそう口にすると祖父さんはホッとしたような表情を浮かべた。
「やってくれるのかい?佐藤君────────」
ええ、どうして俺なのかはよくわからないですけど、と答えると祖父さんと水森唯は顔を見合わせてニッコリと笑った。
「何を言ってるの。佐藤君ほどの適任者はいないのよ」
祖父さんもうんうんと頷く。
「……はぁ」
よく状況が飲み込めないまま俺はぼんやりと返事を返す。
俺がプロデューサーに適任?
なんかゼンゼン畑違いとしか思えないんだが。
「????」
俺が狐につままれたような表情をしていたからだろうか。水森唯が説明するようにこう言った。
「こういうのはね、逆にアイドルに興味ない人の方が向いてるのよ」
過去の失敗を二度と繰り返さない為にもね、と水森唯は強調する。
祖父さんも深く頷いている。
「いや、確かに俺はアイドルとかに興味無いけどさ─────────なんで俺?」
俺がそう聞き返すと水森唯は意味ありげに笑った。
「佐藤君は絶対大丈夫な人だってわかってるからよ」
だから、と水森唯は続けた。
「佐藤君が適任なの。これ以上なく、ね」
そう言われてもピンと来ない。
文化祭レベルのステージとは言え、素人にプロデュースなんて出来るのか?
俺がまたしてもポカンとしていると水森唯が俺の肩を叩いた。
「ほら!しっかり頼むわよ。プロデューサーさん!」




