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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢がやってくる

【隠れ蓑】少女は転生者

作者: まい

 想定では5,000文字台でまとめる気だったのですが、女性=おしゃべり の単純な偏見でキャラを作った結果、無駄に長くなりました。


 それで不快に思われました方には、前もって謝罪致します。 ごめんなさい。

「――――公爵令嬢! お前は我が妻に相応しくないっ! よって婚約を破棄する!!」


『!?!?』


 ざわ……ざわ……。



~~~~~~



 はい、ベタな導入でごめんなさいね?


 ここはよくある、レベルとステータス数値と一人にひとつ授けられる恩恵(ギフト)が存在する、ちょっと戦闘要素が入ったファンタジー乙女ゲームの世界。


 この国を背負って立つ人材を育成する名目で設立された学園で、レベルやステータス数値もキャラ攻略やシナリオ進行に関わってくる。


 その世界でギフトを取得……覚醒させて初期ステータスも確認する儀式を受けた瞬間に前世を思い出したわたし、ジミー・マルーデ伯爵令嬢の視点でお送りするわ。



 わたしの前世は~……どうでも良いわね。


 とにかく死んじゃって、神様から転生させるヒロイン予定の子を間違えちゃったから、手段を問わずに上手くフォローして欲しいって頼まれたの。

 もちろん一方的な頼みなんてお断りだから、報酬を要求したけど。



 で、それに向いた家柄とギフトを貰って送り出されたわ。



~~~~~~



 転生した先は、王家の影……気付かれずに護衛する役目を与えられた内のひとつ、マルーデ伯爵家。



 覚醒させる儀式が区切りになってたみたいで、そこでの生活は地獄へ変わった。


 ギフトを覚醒させるまでは、とても優しくしてくれたんだけどねぇ。 あはは……。



 いわゆる隠密みたいな仕事をする訳だから、とにかく鍛えろ! 筋トレだ! レベル上げだ! 勉強だってパーフェクトにこなせ!

 貴族名鑑は全て記憶しろ!! 周りに溶け込むには、礼儀も忘れるなっ! 周辺国家の言葉もしっかり覚えろよ?


 まだまだあるけど、こう言うのばっかりやらされて、とんでもない貴族家に転生させられたモンだって泣いてばっかりだった。



 それでも神様の頼みをこなすために、必死に食らいついて努力を重ねたわ。


 …………ごめんなさい。

 正確には、泣いてばっかりだったのは最初だけ。


 だってレベルがある程度上がったら、ステータスも上昇して勉強が(はかど)った捗った。


 この世界はズルすぎ。 知力が高まったら物覚えが恐ろしく良くなって、スルスル頭に入るの。

 体力が高まれば、スポーツ国際大会の短距離走の選手より明らかに速いまま、マラソンの距離より何倍も遠くまで走れる子供になるし。

 腕力ならトン単位の荷物も楽々だし、器用だったら豪華な飴細工やウェディングケーキも簡単作成。


 前世でもステータスが欲しかったわぁ。


 やり手の営業として働いても、定時で上がれる可能性が…………っと、愚痴(ぐち)っちゃってごめんなさいね。 おほほほ。



 ギフトの【隠れ蓑】も超便利。


 最初は傘地蔵(かさじぞう)のおじいさんが(かぶ)っていた藁簑(わらみの)を着るだけだと、思っていたんだけどね……。



~~~~~~



 時間が進んで、ゲーム本編開始の入学式。


 基本は同性と同い年って事で、第1王子様の婚約者――ゲーム()()悪役令嬢の子よ――を影から監視・護衛する任務をもらったの。


 何て言うかね、その婚約者ちゃんってお目目キラキラでクリックリしてて、いかにも乙女なお嬢様! って感じの可愛い子だったのよ!

 そんな子をずっと見ていられるなんて、役得だわぁっ! とか叫びそうになったわね。


 影は結構な数がいて交代制だから、一人で24時間対象に張り付いてろ~とかになるブラック労働じゃないから、心配は無用よ?


 それで堂々と王立学園へモブとして入学。


 その時に制服を着た姿を姿見で見てみたけど、わたしって“見切れちゃん”だったと気付いたのよ。


 教室の背景画で、たまに見切れた位置に居るとても地味な女の子。 これには驚いたわ。

 この子は影だったんだって。



 それで教室にて静かにして聞き耳をたてていると、聴こえたのは聖属性が使える平民出の女の子――例の転生ヒロインちゃんね――が話題の中心だったのは、まあ当然よね。


 ゲームの主人公なんだし。

 式の会場へ移動するタイミングで迷子になって、王子様と遭遇イベントまでやったんでしょうし。



 それで魔道具を使った能力測定――レベル・ステータス数値・ギフトの公開――がその日の内に行われて、ヒロインちゃんのステータスを間近で確認。


 ……ああ、これは国公認で測定員に【隠れ蓑】で変装して、間違いなく正確な数字を知るためにしたのよ。


 そしたらね?



「………………え? は? あ、あぁ。 …………はぁ?」


 おお、パニックを起こしてるわ。

 アレ知ってる。 わたしも前世の記憶を思い出した時は、あんなのだったわ。 うん。


「はぁ!? なんでよ? なんで私が悪女型なのよっ!」


 小さく(わめ)いているヒロインちゃん。 ぷくく……あ、いや失礼。


 魔道具で測定する寸前までは正統派ヒロインっぽい顔付きだったのに、測定が始まったら急に生意気女になってったのも、笑うポイント。


 今完全に前世の記憶が戻ったみたい。 ぷぷぷ、貴女に相応しい成長(タイプ)じゃない?



 話を戻して解説するけど、○○型ってのはヒロインちゃんの初期ステータス数値の事ね。



 種類はいくつもあって、代表的なひとつが悪女型。

 魅力>知力>器用>その他 こんなステータス数値で、レベルが上がってもその比率を守って上昇。

 魔法適性――使う際の効果補正――は 聖=闇>その他 で、こっちも成長するの。

 ギフト【(まも)りたくなる雰囲気】の内容をぶっちゃけて言えば、異性――攻略対象――の修羅場イベントが起きにくくなるやつ。


 と言う、ベッタベタな悪女仕様。


 ギフトも型毎に違っていて、ヒロインちゃんはこの測定が始まるまで【???】と伏せられていて、初めてここで知る流れね。


 他にも姫騎士(のーきん)型、魔法生産(たぁるうにぃ)型、正統派聖女(そうりょ)型、硬い女(たんく)型、魔法使い(いいんちょ)型等、他にも色々。


 一番有名なのが「なんでサイキョー型じゃないのよ!! 記憶だと、選択肢的にサイキョー型よ!?」大器晩成(サイキョー)型。


 全数値最低で、魔法適性も全属性最低。 ギフトさえ、まだ伏せられたまま。

 でも成長率が最高のロマン型。


 これはレベル10までに他の型の平均数値に追い付いて、30で各型の最高値に全項目で到達、カンストとなる50で全数値もカンスト。

 魔法適性も同じ。


 ギフト名【万能】

 30レベルでギフトが開示されて効力発揮、ステータス全項目に実数プラス補正・あらゆる確率判定で有利な方向へプラス10%と言う、トンデモギフト。




 これらの型はプロローグの選択肢で決まるんだけど、現実(リアル)になっちゃったこの世界だと、選択肢じゃなくて本性(ほんしょう)みたいね?


 あ、わたしはギフトが違うものの、サイキョー型よ? 神様が配慮してくれたみたいで、泣くほど苦労した甲斐はあったモンよ。

 ステータス数値が高いだけでも、本当にヤバいのよ。 ガンガン強くなってく感覚が、本当に気持ち良かっ()わぁ。


 そうそう、わたしの測定はしっかり偽装済み。 王家が指示して、無難なデータとなりました。



 それでも表情を取り(つくろ)って、しれ~っと澄ました顔をするコイツは正に悪女! だと思った。

 これは間違いなく逆ハーレムルートを目指すと確信して、(おうけ)へ注意するよう報告したわよ。


 報告・連絡・相談(ほうれんそう)を忘れないわたし。 社会人の(かがみ)でしょ? ふふん。



~~~~~~



 あの時からおよそ3年経って、現在決戦の卒業式後に開かれた夜のパーティー。


 わたしは今生徒(がわ)でなく、パーティーに参列してる王家の、王妃様の(そば)で侍女のふりして控えてます。


 正統派お姫様が、少しだけトシ食った様なおキレイさなんだけど、持ってる雰囲気は肝っ玉母さん(ビッグ・マム)。 絶対に敵にしちゃダメよ?


 この王妃様、実はわたしと同じ元OL系転生者。 それで日本食に飢えていたお方で、わたしのギフトでお望みの物を作れるって知った途端に呼びつけられて、すぐに意気投合。


 いかにもな知識チートで内政革命する王妃様だなぁ……とか思ってたけど、お仲間でした。


 それから現在は、国の農業機関各所で日本食の原料を鋭意増産中よ。



 ん? どうやって【隠れ蓑】から和食をって?


 ビビったわよ~。 (みの)って多くが()()なのよ。


 それでわたしも日本食に飢えていた時期に、実が付いたままの簑が出てこないかな~って思いながら【隠れ蓑】を発動させたら、なんと!


 それ以外にも周囲へ溶け込むのに必要と思う小道具とかも出せたりして、様々な物を出して王妃様と遊びましたわ。


 他にも、変装した職種に溶け込めるよう、変装した瞬間からその仕事が出来る馬鹿げた能力もありました。


 兵士や騎士なら武術、生産職なら、魔法使いなら……って。


 まるで〈ホットスナックのチキンください……〉みたいに、直接脳内へお届けされる感じでインストールされるの。


 最初は恐かったけど、慣れりゃ天国よ。 ギフトで色々な変装を1度しとけば、万能少女の出来上がりってね! がははのは!


 家の厳しい訓練も、このチカラを知ってからは鼻歌混じりに楽々よ!



 話が逸れたわね。

 それで元日本人の元OL同士で最高に盛り上がった結果、次期王妃付きの侍女兼護衛って立場で囲わ……ごほん。 名誉ある立場と婚約者の世話を確約されたのよ。

 まあ今はしがない王子様の婚約者を影から監視する、メンバーの一人ってだけですけど。


 婚約者確約は嬉しかったわよぉ。

 前世は仕事仕事でオトコと付き合ってる時間なんてとれず、せっかくできた彼氏はみんな「キミは俺がいなくても生きていける」が決め台詞でオワカレなんだもの。


 それが今世は相手確約! 前世の悲しみよ、サヨウナラ!!


 前世で同じ悲しみを抱えていた王妃様にありがとう! わたしをすぐ捨てる馬鹿野郎共よ、サヨウナラ!!


 ……あぁ、馬鹿野郎共(あいつら)を今思い出しちゃって、腹が立ってきた。



 じゃない、閑話休題(はなしをもどすわね)


 パーティーは(とどこお)りなく進み、合間に休憩で王妃様と控え室へ引っ込んで、みたらし団子を食べたりお汁粉や緑茶をすすったり。


 それで終盤、待ちに待ってた王子様(逆ハーレムメンバー)達。


 全員攻略対象だけあって様々なタイプのイケメンが揃ってキラキラしてるんだけど、今の顔つきはとってもギラギラ油ギッシュ。

 みんながみんなヒロインちゃんに良いとこ見せようって様子が、お馬鹿な男子チックなの。


 で、そいつらによるプログラム、断罪(笑)のお時間です。




 ……と観客気分で見ようとしましたけど、実際は調べた通りの展開でつまらないんですよねぇ。


 ヒロインちゃんを警戒するために、途中から影が張りついてて、その報告も共有してるし。


 公爵令嬢様が悪いとする捏造された犯罪の証拠を挙げて、これまた捏造された証言をする令嬢を並べるばかり。



 ほら、わたしは【隠れ蓑】があるでしょ?


 それで観葉植物や学園の備品のふりも違和感なく出来る所為(せい)で、王子様達の計画は聞き耳をたて放題。


 小道具を出せるギフトの拡大解釈で携帯端末(ス○ホ)とかも出せちゃって、撮影・録画し放題。


 変装中は違和感を与えないって部分も悪用して、パシャパシャとカメラ音がしても、誰も(とが)めないって間抜けな構図。


 お陰様で、影の仕事が恐ろしく楽なのよ。


 国王ご夫妻、この企みを報告したらそろって頭を抱えたわね。


 ちゃんと育てたつもりなのに()()して、どうしてこうなった。 って。



 あ、この乙女ゲームは、第1だけじゃなくて第2王子も攻略対象なのよ。

 兄弟でヒロインちゃんを奪い合う「止めて、わたしの為に争わないで!」な展開があって、昔は大いにキュンキュンしたわ。


 今? あんな悪女(笑)な小娘に手の平の上でコロコロされてる、お馬鹿兄弟達には苦笑しかないわよ。


 だって婚約者の公爵令嬢様は、ヒロインちゃんへ迫ったのは1度きり。


 「(わたくし)の婚約者に、近寄らないで下さいまし!」って、まるで子犬みたいに吠えただけなのよ。


 これは王妃様の原作改変で努力した成果ね。


 元はワガママ娘だったらしいけど、次期王妃となるべく王太子妃教育を(ほどこ)した結果、みるみる内に可愛らしくなったとか。



「お前がこんなにも醜悪(しゅうあく)な女だったと、知ったときには失望したぞ!!」


 とかなんとか叱責(しっせき)されて、小さく体を震わせている婚約者ちゃんは、本当にお可愛らしい。


 ……まあ王太子妃教育で少しずつ謀略だのなんだのと言った、人の悪い所を卒業したら教え始めるって王妃様は言ってたから、可愛らしいのは今限定みたいだけど。




 それであの「婚約を破棄する!」が来て、王妃様とアイコンタクト。 私達の出番だわ!


 これから貯まりに貯まった画像・動画フォルダが火を吹くわよ!


 あんな可愛らしくて努力も出来るご令嬢を泣かせおってからに、覚悟しやがれ馬鹿野郎共っ!



~~~~~~



「そこまでになさい、馬鹿息子達!」


 座っていた椅子から立ち上がり、勇ましく声を上げた王妃様。


 に(あわ)せて、わたしも魔法や使う予定の機材を準備しないと。


「貴方たちは、こんな稚拙(ちせつ)奸計(かんけい)で良いように踊らされて、恥ずかしいと思わないのですか! アレを見なさいっ!」



 王妃様が会場の出入口がある壁へ指差すのと同時に、水の魔法で大きくスクリーン状の濃い霧を生み出した。


 これはアレよ。 滝とか噴水の水をスクリーンに見立てて映像を流す、夜のキレイな演出を参考にしたやつよ。


 ざわつきが大きくなる会場。

 ああ……ファンタジー世界は蛍光灯や水銀灯なんか無いし、会場が前世より照明が薄暗いから、明かりを消さずに済むのは楽で良いわぁ。



 スクリーン状の霧に光の魔法で投影したのは、ヒロインちゃんと王子様達他による、それぞれの密会写真の数々が次々と。


 この写真はス○ホの画面を、拡大投影した物。

 連動するプロジェクターとか無いし、有っても電源が無いから、こうやってアナログな手法で投影するしかないのよね。


「な、なななななな!? なんだこれは!」

「なんでこんなに鮮明に!?」

「こんなのは単なる絵だ、捏造だぁ!!」


「は? 指でスワイプする演出!? この世界に○マホなんて有るのっ!?」


 と騒ぐ逆ハーレムメンバー達の様子から、生徒達のほとんどは事実を察知。

 さっきまで公爵令嬢様を冷たい目で見ていた連中が、視線の先を変更。


 「次は動画よ」と王妃様からの指示。


 これで(うつ)したのは……。



〔あの女め……もっと性悪(しょうわる)だったなら、簡単に婚約破棄出来たのに〕


〔兄上、偽証してくれる令嬢を確保しました! あの女が次期王妃になるのは気に食わないと、自発的に協力してくれるそうです!〕


〔そうか、その令嬢は災難だな。 真実はどうあれ、公爵家へ盾突いた事実によって、今後苦労するだろうに〕


〔悪い顔をなさってますよ、兄上〕


〔はっはっは。 これ位できないで、王にはなれんよ!〕


〔まだ王太子が誰かは決まってませんよ?〕


〔生意気な弟だな。 しかしそれより、まずは我が(きさき)正妃(せいひ)とする準備をせねば!〕


〔違う! あの娘は僕のお嫁さんにするんです!〕



 (みにく)い醜い兄弟喧嘩。 プラス陰謀の一部の様子を、風の魔法でスクリーンから音声が出ているように細工しました。


 もちろん馬鹿王子達は狼狽(うろた)え喚き散らす。


「息子達の挙げた証拠と証言とやらは、これで信憑(しんぴょう)性が薄まった! これでもお前達がした糾弾に正当性は有るのか?」


 正当性なんて有るわけねー。 こちとら影として、その現場を確認してるんだもの。


 そうぼやきたいのを我慢して続きを待つと、連中から出るわ出るわ言い訳の嵐。


 それに対応した写真や動画をスクリーンに表示させて、言い訳を無慈悲に潰すわたし達。


 これに王妃様はもういい加減ウンザリしてきたのか「とっておきを出しちゃいましょう」と、無慈悲な宣告をわたしへ下したわ。


「これが最後。 本当は国の名誉の為に出したくなかった、最後の証拠を今から見せる。 過激な内容(ゆえ)、気分が悪くなった者は場を離れなさい」


 退避許可は王妃様の慈悲ね。

 実際、アレは強烈だもの。


 年齢制限的に。


「こんな下劣な者が、王家へ入るなど許されると思うわけが無かろう!」


 なんて言葉を添えながら、王妃様が画面へキューサイン。


 ぐへへへ。 僕ちゃん嬢ちゃん達~、大人の教育の時間だぜぇ~?




〔いけないわ王子様……婚約者がいらっしゃるお方なのに、私が欲しいだなんて〕


〔何を言う。 あいつとは婚約破棄し、キミを正妃とするのだ。 だから遠慮なんて不要だよ〕


〔王子様……〕


――以下、略――




「いやーーー!! 盗撮よ! 人権の侵害よっ! 不正取得した証拠は、裁判で無効なのよぉ!!!」


 ドレスを着ているのに、腰が砕けてみっともなく女の子座りして泣きわめいているヒロインちゃんと、それを見る群衆の図。



 ……うん、まあ()()()()にヒロインちゃんと(さか)ってる動画を、順繰りに流した訳よ。


 見所は逆ハーレムメンバー全員に〔私……初めてでどうすれば良いのか、分からないわ〕なんてカマトトぶるヒロインちゃん(クソ○ッチ)


 初めての証はどうしたのか?

 動画の最後で必ず映るわ。 ()()同じ誤魔化し方でね。

 事後に、忍ばせていた何かで作った赤い汁をたら~っと。


 その動きにモタツキがなくて、随分手慣れてる様子だったのには反吐(へど)が出そうだったわ。


 あいつは前世でも同じ手口で、何かしてやがったと確信するよ。


 それで最後には

〔初めての経験はどうだった?〕

〔初めては大変だって教わっていたけど、貴方だったからかな? 素敵な夜になったわ〕


 だとよ。

 ばっかじゃねーの? 騙す方も騙す方だけど、こんな三文芝居を見抜けない若造どもも若造どもだわ。


 …………おっとごめんあそばせ? わたしったらついうっかり、汚い言葉を。 をほほほほほ。



 ごほん。 とひとつ、咳払(せきばら)い。


 これって大問題なのよねぇ。

  これは血統主義とか能力主義とかの話じゃないわ。


 父親の分からない子供なんて、どこのだれが受け入れるのって話になるのよ。


 こいつが産んだ子は、自分の大切な息子の子供なのか?


 性に奔放(ほんぽう)な嫁を迎え入れて、そいつが余計な病気や問題を持ち込む可能性は?


 男を買うために家の金を使い込む可能性は?


 そもそもこいつを迎え入れた時点で、今回の問題全てを背負うこととなるのよ。



 これを見せられ、退避者がゼロだったのは笑えたわ。

 みんな情事に興味津々。


 卒倒するんじゃないかと心配してた、気の弱そうなご令嬢達ほど、鼻息荒く食い入るように見てた子が多かったのには苦笑したわね。



 ちなみにこのアダルトな動画は、王子側の影に撮ってもらいました。


 まだ若い女の子にやらせる仕事じゃないってね。


 その女の子扱いは嬉しかったけど、いつもよりテンションが高かったのは気になる。


 ジーってジト目してやったら、目が泳いでたのも気になる。



 じゃなかった。 補足ね。

 王子側の影って言っても結局は王家の影だから、同僚なの。


 違う貴族家だからって反目しあってる訳じゃないってね。


 王子を担当しているか、婚約者を担当しているかの違いってだけ。


 その撮影しに行った影もわたしと同い年で、同じ学園に通ってるから情報の共有が楽なのよ。


 1日が終わって、報告書を提出する前に顔を合わせて、その影と情報交換するのが日課。


 だからかなり仲が良くなったわ。



「騎士達、この()れ者共を捕らえよ!」


 話を戻して、現在の逆ハーレムメンバーとそのお姫様は、思いっきり近衛を始めとした警備の騎士に捕縛され一件落着。


 ヒロインちゃんが

「逆ハーレムルートへ入ったら、バッドエンド直行? ふざけんじゃないわよ!! 最大レベルまで上昇(カンスト)した力を見せてやるっ!」

 なんて逆上してひと悶着。


 その時はわたしが【隠れ蓑】で瞬時に騎士へ変装して飛び出し、カンストを()()()ステータス数値にモノを言わせて制圧。


 いやね、50レベルが最大の世界なのに、わたしだけ上限が60だったの。

 サイキョー型でプラス10レベルは、本気でズルっこよね。


 これって多分、神様が配慮してくれたのよ。 あのヒロインちゃんの間違いを止められるようにって。




 これで神様との約束は果たしたはず。

 手段は問わず、おてんばしない様に止めたもの。


 この報酬は、残りの人生で怪我や病気無く生活できる体にしてくれる程度でいいわよ。


 だって…………




「お疲れ様だ」


「ええ、お疲れ様」


 わたし自身は、将来が約束されているもの!


 話しかけて来たのは、実は攻略対象の一人。


 真の隠し攻略対象!


 第1王子側の影で、5回以上潜んでいるのを発見するランダムイベントをこなして、だれも攻略しない友情(ノーマル)エンドを迎えると、現れて(さら)うように求婚してくるのよ。


 ヒロインが逆ハーレムルートに入ると攻略対象から外れるのか、何度ロードを繰り返しても出現しなくなる。 逆ハーエンドスチルでも登場しないのよ。

 ついた渾名(あだな)が、逆ハー嫌いマン。


 学園で王子側と情報交換する相手でもあります。

 実はこの人が、わたしの婚約者候補。


 正式な婚約は、この問題がキレイさっぱり終わってからでしょうね。



 攻略対象である以上、冗談抜きの美男子!

 仕事が影だけに、影のある顔つきだけどソレがまたイイ!!


 必要最小限しか話さないのはマイナスポイントだけど、そこはまあわたしがお願いと言う名の教育をすればいい話。

 ちなみに職業柄、誠実なのが特大プラスポイント。


 余談だけどこの人、変装の達人なのよ?


 学園で学食のシーンなら必ずと言って良いほど登場する、デブで食事ばかりしてる背景キャラ“学食の主”だったのよ、この人。


 ヒロインと攻略対象が、学食で良い雰囲気になっていても背景でガツガツ。

 背景が壁で、流石にいないだろうと思っても、窓ガラスがあればその反射でガツガツした様子を見せつける剛の者(くいしんぼう)

 真の雰囲気クラッシャー。

 コイツの所為で良いシーンも台無しと、もっぱらの評判だったおデブちゃん。


 本人は学食では、変装(それ)で影としての仕事をしていたみたい。

 設定資料集にも書いてなかった裏設定!



「この後、お前はどうする?」


 相も変わらず、平坦(クール)な顔をしていらっしゃる。


「学食で何かをつまみながら、報告書をまとめる予定よ」


「……そうか」


「貴方もどう?」


 なんだか寂しそうだったので、こっちから誘ってみたけど、少し口角が上がってる?


「そうしよう」


 あ、やっぱり上がってる。 なんか可愛い。


 ちょっとからかっちゃえ!


「貴方の豪快な食べっぷりも、もう見られなくなるでしょうからね。 見納めよ?

 なんだったら、わたしの【隠れ蓑】で貴方が変装した姿そっくりになって、ふたりしてガツガツ食べるのも面白いと思わない?」


 ここでウインク。 バッチン! うふふ♪


 ……地味子がウインクなんて気持ち悪い? 失敬な!


「………………」


「おや? 目を逸らして……もしかして、わたし渾身(こんしん)のウインクに照れてるのかなぁ?」


「…………ふん」


「あっ! ごめん、待って! 待ってって!」


 こいつのリアクションが可愛いくて、つい生意気娘風の追い撃ちをかけてみたら、背を向けられた!


「待ちなさい! ごめんって、調子に乗ってからかったのは謝るからぁ!」





 後日、逆ハーレムメンバーとそのお姫様たちの処分が、関係各所へ通達されました。


 各自あまりにもお馬鹿さん過ぎるために、各自の家の継承権剥奪。


 婚約者がいた者たちは、婚約破棄した上でその相手先への賠償。 賠償はもちろん、個人資産から。 もし払えなければ、不足分の労役(ろうえき)


 王子兄弟は国の手本たる王家として一番厳しく、上記に追加で去勢。

 つまり、おタマ様を潰したそうな。


 王家としては第3王子がいるので、それが(あやま)ちを犯さないよう、祈るしかない所。


 ……しかし、王妃はがんばったねぇ。 側室がいないから、全員あの方が産んでるのよ。



 肝心のヒロインちゃんは、完全に拘束・監禁されました。


 今後は国の道具として、徹底的に管理された環境で労働に()かせるそうです。

 本文で書いてなかった部分の、その後。 及び、その他。


ステータスの魅力について


 見た目の魅力だけでなく、自身の能力や雰囲気、家や本人の実績、コネクション(りょく)や将来性。

 様々な要因を総合した魅力を数値化したもの。

 なので、ジミーが超のつく美少女って訳では無い。



ジミー(主人公)  文中で唯一の名前ありキャラ


 公爵令嬢が第3王子の婚約者と国から発表された後、ひっそり婚約者候補だった隠し攻略対象と、正式に婚約。

 お相手の教育は順調で、会話の量が増えている。

 極めて(まれ)だが、顔を真っ赤にしながら冗談を言おうとするようになった婚約者へ、激しく身もだえている。


 文字数の関係でカットしたけど、糾弾するシーンで前世のビジネススーツへ【隠れ蓑】で変装。

 すると一緒に使ってたノートPCも現れて、それで証拠写真をプレゼンして下手なパワーポイ○ト使いを披露する。

 それでヒロインちゃんから「余白ができたからって、変なイラストをスタンプしてんじゃないわよ!」とかって突っ込ませる予定だった。



隠し攻略対象  名前を考えるのに疲れて、みんな名付けてない


 会話が少ないと、ほっぺを(ふく)らませてすねる婚約者にたじたじ。

 一生を王家の影として終わる。 仕事人間としてそんな覚悟でいたが、一緒にいると嬉しそうにする婚約者を見て、考えが変わり始める。



公爵令嬢


 可愛らしいご令嬢だったのは、今は昔。

 王妃教育によって、完璧な淑女へ成長。


 しかし、新しく婚約者となった第3王子は年下で、弟みたいな可愛さを感じており、第3王子の前でだけキャラがおかしくなる。



第3王子


 公爵令嬢とは4歳差。 王太子になったけど、まだまだ生意気盛り。

 でも、かわいがってくれるお姉ちゃんみたいな公爵令嬢を、それほど拒絶(きょぜつ)してはいない。



国王


 王妃の方が立場的に強く、ほぼお飾り。

 黙って座っている方が上手く国が回るので、楽で良いと思っているとかいないとか。



王妃


 説明不要。 国の最重要人物。

 やり手のお姉様。 甘くみることなかれ。

 日本食の普及が目下の野望。



逆ハーレムメンバーズ


 基本的に、全員閑職。 昇進の見込み無し。

 一部不満が爆発して、すぐ鎮圧(ちんあつ)される様な規模の反乱を起こしたり、不満から平民へ乱暴して色々問題を起こして処罰されたり。

 更正するものはいませんでしたとさ。



王子ふたり


 ヒロインちゃんのビッ○ぶりが発覚してから、ほぼ廃人。

 たまに開ききった瞳孔(どうこう)が正常に戻ったかと思えば、精神がとても不安定になり取り押さえられる日々。

 王子としての権力は剥奪(はくだつ)され、ふたりして国の事務方の作業マシン(ただし時折暴走する)状態となる。

 晩年は多少正気に戻ったが、女性不信は一生治らなかった。



ヒロインちゃん


 本当は最後に引っ立てられて、連れ去られる時にジミーと王妃様が焼おにぎりとか食べてて「焼おにぎり!? アンタ達はもしかして!! ムキーーーーー!!!」とか言わせる気だったけど、本文が長くなりすぎてボツにorz


 王妃がジミーからヒロインの(シナリオで果たす)役割を聞いているので、それまでは丁寧に拘禁。

 役割が済んだら、お飾りの広告塔として都合良く使い倒された。


 もちろんヒロインちゃんに自由は無く、脱出するスキさえ見つけられずに、そのまま()()()()清らかな聖女として(たた)えられたまま死去。



アダルトな動画


 後世で人相は微妙に変わっているが、動画の一部が春画だの春画集だのとして、絵で出回ったり。

 夜の指南書の教材として、描き写したものが図解資料とされたり。

 ソッチ系の本を出す際の基本モデルとして、永く愛用されたり。


 長々とみんなして恥を晒し続けるオチが待っている。



神からの報酬


 ああなる前に止めたり、教育してほしかったのだが、一応約束は果たされたと神に認定された。

 ので、ジミーの望み通り怪我や病気をしない体(老化はするし、寿命もある)になる加護を付与された。



~~~~~~



 前書きでも書いた通り、思ったよりグダグダと長引きました。 反省。


 こう言ったゲーム世界転生の短編で、どこまで世界設定を出せば本編として成立するのか。


 その辺はまだ手探り中なのです。


 普通のアドベンチャー方式のゲームなら何も考えないんですけど、ステータスだのギフトだのが関わってくると、途端に説明が必要な項目が増えちゃって……。


 しかもゲームあるあるとか、そのゲームでは常識だった小ネタとか、リアルさを演出しようと考えればまた……(頭抱え)



 うむ、精進あるのみ!

 自分のベストバランスを見つけるには、手探りで苦しみながら書いていくしか無い!(震え声)

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