第6話 冒険者ギルド
ここは、チャオチュール王国。高い税金と手厚い社会保障が特徴で、ツクール3世が領主を治める、人口5万人ほどの国である。
開けた平地に西洋風の巨大な城がそびえ立ち、周りは堀に水が貯められており、中央の石造りの橋からでしか城に入れないようになっている。
また、堀の外には、広い庭の大きな屋敷が複数構えられており、城の従者達や兵士、貴族などが住んでいた。
ここが俗に言う貴族街であり、周囲を20mほどの高さの壁が囲んでいた。
壁の外には城下町が広がっており、8つの方角に向けて、幅数十mほどの広い道路が広がっていた。
広い道路は馬車のような乗り物や人がせわしなく行き来していた。
また、広い道路沿いには冒険者ギルドや商業ギルド、闘技場、武器屋、道具屋、宿屋や料理店など公共的な施設が並び、広い道路と道路の間に一般市民が住んでいる居住区があった。
上空からから見ると道がまるで蜘蛛の巣のように広がっていた。
西には森が広がっており、西へ向かう太い道は森の周辺で途切れている。森にはエルフや獣人達が住む村があり、また、秀吉達が最初に転生した場所でもある。
また、東から南にかけては遠くに山や森が見えるものの、しばらく平野で農村地帯や遊牧地帯が広がっているのだそうだ。
このような知識をネイルから教わりながら歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。
かなり広そうな2階建ての立派な建物だが、これでもギルドの支部で、本部はもっとすごいそうだ。
冒険者ギルドは国と密接に繋がっており、ギルド員は税金が免除されるかわりに、王国法で冒険者ギルドとギルド員には様々な義務が課せられるなど、
表向きは独立した戦闘集団であったが、ほとんど公的な機関であった。
中に入ると酒場のようになっており、また、エントランスは吹き抜けになっていた。
奥に受付カウンターがあり、受付カウンターからさらに奥は2階まで壁になっていた。事務作業などをするスペースがあるのだろう。
カウンターまで進むと、白い猫耳に金髪の可愛らしい子が対応してくれた。
「こんにちはなのにゃー」
「あ、こんにちは。へー、ここは獣人の女の子が受付をしてるんだね。」
「そうなのにゃー。よろしくなのにゃー。」
初対面の秀吉にも、愛想よくフランクに対応してくれた。たまにピコピコ動く猫耳が可愛い。
「冒険者ギルドに登録したいんだけど」
「分かったにゃー。今まで登録したことは無いにゃ?二重登録は発覚し次第、チャオチュール金貨だと40枚!オーディン金貨だったら大体24枚くらいの罰金が発生するにゃー。」
「オーディン金貨って何?」
「お兄さん、相当田舎から来たにゃ?」
オーディン金貨を知らないことを伝えた途端、はっはーん、さては、みたいな態度が表情と猫耳に如実に表れた。
「オーディン金貨っていうのは、ここ、あいみょん大陸で1番有名な硬貨のことにゃ」
「様々な王国の硬貨はオーディン金貨が基準で取引されるにゃ。どこの田舎から来たか分からにゃいけど、オーディン金貨も知らない田舎者は回れ右して住んでた村に帰ることをオススメするにゃ」
「王国では、知識と力がにゃいと、しゃぶり尽くされてスラム落ちして、気付いたら犯罪奴隷だったなんてよくある話にゃー」
「さ、分かったら帰るにゃ」
金髪で白い猫耳の可愛い受付の女の子は、そうまくし立てると、くるっとターンして離れて行こうとした。
だが、その瞬間、秀吉は叫んだ。
「ちょ、待てよ!」
秀吉は、あれ、今のかなり木村拓哉に似てたな、と思いながら続けてこう言った。
「田舎から来たとしても弱いとは限らないだろ」
「ほぅ?にゃーの目が節穴だとにゃ?」
「あるんだろ?力を測る水晶玉みたいなやつが。」
(こいつ一人称、にゃーなのか。文字だとニャースの声で再生されるから止めてくれ!)
「田舎者のくせに、水晶玉のことは知ってるのかにゃー」
(くそっ、煽られているのに、全く怒りを感じない。それどころか、もっと煽って欲しいと思ってる自分がいる…!)
猫耳の美少女はカウンターの下から水晶玉を取り出すと、カウンターの上の専用の台に固定した。
「この上に手をかざすにゃ。先に言っとくと、魔力0〜10は無反応にゃから。つまり、お前がやっても無反応にゃ」
(くそっ、当たってやがる…)
「主様、ここはわらわに任せるのじゃ。こほん、獣人の小娘よ!偉大なる存在のわらわがその測定とやらをしてやるのじゃ!感謝せい」
聞くに徹していたネイルだったが、そう宣言すると、腕を組みながら猫耳の少女を見下すように前に出てきた。もっとも、身長差で実際はネイルが見上げていたが…。
「偉大なる存在にゃ?竜人ごときが、何を言ってるにゃ。どこかに頭を打ったに違いにゃいにゃー。早く病院に行くにゃー」
「竜人は魔力が低いから間違いなく無反応にゃ。魔力10を超えた竜人なんてみたこと無いにゃ」
「ほぅ、ではもし、わらわが魔力10を超えていたらどうする?」
「竜人が超えているわけ無いにゃー、もしその水晶玉が少しでも反応したら、皆の前で裸踊りでも何でもしてやるにゃー」
「ほぅ、言ったな。わらわもそこまでやらせるつもりは無かったんじゃが、竜人は約束は守るし、相手にも守らせるのじゃ。すまんのぅ」
ネイルは、そう呟いて水晶玉の上に手を乗せた。
すると、バシュゥという音と共に水晶玉は赤色に激しく光り出した。
「なっ、赤色は50以上の証にゃ!信じられないにゃ!何かの間違いにゃ!」
「どうじゃ?では、裸踊りでもしてもらおうかの…」
「ひっ…!」
猫耳の美少女の顔はみるみるうちに青ざめていき、へなへなとその場にへたり込んでしまうのだった。
次回、猫耳美少女が羞恥全開で裸踊りします。