第47話:魔王の城の守護者
光が目の前から消え、目の前には大きな城がそびえ立っていた。
空は黒い雲がかかり、すぐに雨が降りそうな空だった。
周りには色々な花が飾られてあった。
ついに紅蓮の魔王の城へ来た。
そして城の大きな扉の前にはナンバー3のナリス・エレストレーベルが立っていた。
まさかの扉の前で待つと言う……何であっちから向かってこないのか疑問だけど…。
だが、この前みたいに全くの雰囲気で佇んでいた。
そこから感じる強さと言うのは若干鳥肌が立つ気配が漂っていた。
「ようこそ勇者達、ここは空に浮かぶ紅蓮の魔王様城……この城の奥の玉座には紅蓮の魔王様がお前たちを待っているが……その願いはこの場で…届かないだろう…」とナリスは手を上に上げた瞬間、炎が手の周りに発生し、赤いランスを形作った。
「この幹部ナンバー3ナリス・エレストレーベルがお前達を屠るからだ!」赤いランスをこちらに向けた。
「すぐに終わらせる!」レイムが剣を抜いたのと同時に破壊の翼が周りに渦を巻いた。
まず上位魔法を叩き込み、そこに攻撃を……。
「ダーク・サークル!」レイムは手を伸ばした。
するとナリスの下に大きい魔法陣が展開し、破壊の波動がナリスの下から放たれ、直撃した。
「あーはははははっ!さずが破壊の神……だから戦いは面白い」とナリスはいつの間にか赤い鎧を身に着けていた。
この性格はレイムと少し似ている…。
「これは本気だ…私も死ぬかと思った時は鎧を纏うが人生では一回もない…だけど魔王の前で体力と魔法は温存しなくちゃいけない」とレイムは剣を鞘に納めた。
「レイム…?」とソージはレイムの動作に不安になった。
温存するために使えるか正直心配だけど……。
「だから今はこれの出番だ!」とレイムは剣と反対についている鞘から短剣を抜いた。
「シルバーウォー!」
ナリスはその武器に警戒したのか、すぐにレイム達に迫ってきた。予想外だったのはまるでテレポートなみの早さだった。
そして、消えたと思ったら、レイムの正面へ現れ、ランスを一突きした。
キーンという金属音が響いた。
レイムは両手で短剣を持ち、ランスを止めていた。
すると短剣が光り出し、ランスを包んだ。
「引っかかった…この短剣の効果は全属性を無にすること…つまり触れた武器の属性攻撃を無効化することが可能、一定時間は…だけどそれで充分!」レイムは短剣を左手に持ち替え、右手で剣を抜いた。
「てぁぁぁぁぁ!」ナリスの左肩を目掛けて、レイムは剣を振った。
グシャッ
「あぁぁぁぁぁぁっ!」と悲鳴を上げ、ナリスはレイムと距離をとった。
ナリスの左腕はなくなっていた。
それを見ていたソージ達は唖然とした。
えぐいな……ロナはともかく3人はそう思っていた。
ナリスはこの状況を飲み込めなかった。
まさかこの鎧と私の腕ごと切り裂くなんて、その武器のクラスは桁違い…。
近接攻撃では剣が当たれば、完璧に切り落とされるし遠距離は魔法は無効化…どうやって…。
効果が切れるまで、戦い続けるのは不可能…だけど無効化と言ってもあの短剣に当たらなければいいだけの話…。
私が気を付けなければいけないのはあの黒い剣のみ、あの短剣のクラスはあの剣より明らかに低く、そして無属性の剣ということは無属性魔法は無効化できず、この鎧にもその刃は通らない…。
まだ私にも勝ち目はある…あっちが武器2本だというのならこっちだって……。
「はぁはぁはぁ……よかった…奥の手を持ってて……」ナリスはそう呟くとランスの先を地面に刺した。
そして純白に光る短い棒を天に掲げた。
「神器展開!」と叫んだ。
なっ……神器だと……。
レイム達はそれを聞いて懇願した。
神器だとまさかナリスも神器を所持していたのか…。
まさか幹部の中に2人も神器を操る者が…いや相手は紅蓮の魔王だ。
昔、神に挑んだという話も聞いたことがある…その時にも盗むことは簡単だ。
そんなことより…あれが何の神器なのかわからないまま、突っ込むのは良い判断ではない…。
レイムはナリスと距離を取った。
その瞬間、周りの花たちが光り出し花弁が風に吹かれるように純白の棒へ集まった。
ナリスは棒から手を離し、棒は渦巻く花の中へ消えていった。
光が強くなり、突然光が消えた。
そしてナリスの上には純白で輝いている、一本の剣があった。
純白の剣…まさか想像もつかない奴が出てきた…。
ナリスはランスを離し、ランスは消えていった。
右手を上に向け、剣がその手におさまった。
「その武器は…」とレイムは聞いた。
「この神器は元はただの棒だった。だけど今のように周りの元と融合すれば、ただの棒が強力な神器へと変わる。つまりこの武器は形を持たない、自由自在な神器なのだ」
なるほどということは花と融合したということはそれなりの攻撃は読むことができる。
「ソー兄、前は私だけでいい、中間と後ろは任せたよ」とレイムはソージにそう言い、戦闘態勢に入った。
「わかった。気を付けろよ」
「うん」
レイムはまず敵の動きを見ることにした。
するとナリスはその場で剣を振り下ろした。
その瞬間、幾千の花が炎を纏いこっちに向かってきた。
レイムは短剣を前に出した。
花に纏った炎は消えたが、花は消えずにレイム達を切り刻んだ。
「あっ……痛いっ……ただの花弁が…」
くそっ…属性だけ無効化というのが使えなくなってしまった。
炎纏う幾千の花って…まさに火花だ…。
さっきまでは向こうが接近戦で不利だったのが、今度はこっちが接近戦で不利…いや違う、この剣だったら奴の鎧ごと斬れる、だったら私が接近して終わらせる。
接近戦ではコッチが上…そしてあの花は破壊の翼でなんとか…。
レイムは短剣を鞘に納め、突撃する体制をとった。
「はぁぁぁぁ!」レイムは羽を背中に猛スピードでナリスに接近した。
ナリスも攻撃する暇もなくレイムの攻撃を受け止めるしかなかった。
「てぁぁぁぁぁ!」ナリスに攻撃を止められた。
だが接近はできた。だったら接近ができれば、あとは…。
「切り刻め、破壊の翼!」
その瞬間、レイムの背中にあった翼が二人を囲み、高く渦を巻き始めた。
それに気づいたナリスは「燃え尽きろ、紅蓮の花!」
そしてナリスも花を展開した。
強度で言えば、レイムの破壊の翼だが、数で言えば、幾千だが若干花が多い…。
二人の破壊の翼と紅蓮の花が互いに混ざり合い、渦を巻いている。
黒と赤が混ざり合い、力の衝突が起きていた。
通常であれば、破壊の力で紅蓮の力も破壊の力に変えられるが、この花は神器の力で動いているため、無属性の力はなぜか破壊の力で変換することができない。
「これで…」
レイムは自分の翼で花を防いだが、少しダメージを追っていた。
渦の中で何が起きているのはソージ達には眺めることしかできなかった。
あぁぁぁっもうっ……無属性ウザい…。
「てぁぁぁぁぁ!」とレイムの声が響き渡った。
その瞬間、渦を巻く花が破壊の翼によって消滅した。
そして渦が弱くなり、破壊の翼も消えていった。
そしてソージが目にしたのは、ナリスの体を貫いているレイムの剣があった。
「これで……終わりだ……」
そしてレイムはゆっくりを剣を抜き、ナリスはバタンとそこに倒れた。
「ふぅ~…正直、手ごわかった……」そう言い、ソージ達の方を向いた。
3人が並び、レイムの方をじっと見つめた。
ソージ達は前へ進み、レイムに近寄った。
「よかった。無事で…」
「うん…」
レイムはソージに寄り添った。
レイムの傷はもう自動再生で塞がっていた。
これで、幹部を3人倒した…あと恐らく2人だ…。
「遂に来た…この先に…魔王が……」
レイム達は4人で城の入り口の扉を開けた。
ギィーと音を立て、ゆっくりと扉が開いた。
中に入ると下には赤い絨毯が引かれていた。
まさに魔王の城だ…壁には悪魔の彫刻があり、柱は黄金だ。
「とても静か…」そう中は人っ子一人いない状況だった。
レイム達はそのレッドカーペットを辿っていった。
階段を上りきり、恐らく一番上へときた。
目の前には大きい扉…多分この先が…。
いや…誰かわからないけど……。
「誰であろうと…私達は前に進まなくてはならない…。この城に来たからには…ボスの顔を拝まないとね……」
最強の神が魔王を倒せば、名が世界に轟くだろう…。
使命というか…目的としては最強を目指すための踏み台として……やらせてもらう…。
「じゃあ…行くよ…」レイムは扉に手を触れた。
絶対に一人で押せない扉だ…いや門と言っていいほどだ…。
とするとこの先の空間は結構広い…幹部が待ち受けている可能性が……。
そしてソージ達も扉に手を当てた。
その大きな扉はゆっくりと音を立てて、開いた……。




