第43話:グランドマスター
レイム達はダンジョンのそばで野宿をした…そして日が上がった。
あらゆる戦闘などで、まだ血の匂いが起きた時も漂っていた。
「あぁ~よく寝た…野宿なんて初めてだよ」レイムは地面から起き上がり、太陽を見つめた。
さすが、破壊のお嬢様…。
「俺達もそういえば初めてだな」
「そうだね」
「私もだ…」珍しくレイムとソピアは朝早かった。
いや、寝床が悪かったせいだ。
するとロナも起き、空中に地図を浮かべた。
「レイム様、ファイテンラスク領域のまではまだ距離はありますが昨日の戦闘での魔力がまだ回復していません」ロナは今日の移動は歩きと判断した。
まぁ仕方ないだろう、おそらくファイテンラスク領域とその前にも敵はいる…今の状況を考えると危険すぎる。
あとやっぱり面白くないと全員が思っていた。
そして、あの少女が言った言葉、幹部ナンバー2が待っていると…。
「あれが、確かだと言うと…レイム達が目指すのは幹部が待つダンジョンだろう…」
そして、レイム達はファイテンラスク領域に向かった。
あのダンジョンから進んで行くとまた高原に出た。
そしてその草原には一つだけ岩が大きく大地から出ていて、それはとても大きくそしてとても不自然だった。
「うぉ~また高原か…緑がいっぱいでいいね」とレイムは広い高原を見渡した。
レイムは道なりに走っていった。
朝方元気なレイムは走っていった。
すると道の横にある岩まで近づいた瞬間、岩の壁が地面から現れ、その道を閉ざした。
「なっ!」レイムはぎりぎりで止まった。
「レイム大丈夫か…」ソージ達がレイムのあとを追ってきた。
「これは、土属性魔法?…」これは明らかに魔法で岩が出現した。
レイムは地面を蹴り、一旦距離をおいた。
「敵?」4人がそう思い、周りを見渡した。
すると岩の壁の上に人影があった。
それを見た瞬間、レイムは剣を抜き、人影に向けて剣を振り下ろし、斬撃を放った。
だが手ごたえは岩を砕いた音で回りに岩の破片が飛び散った。
「何っ…どこに!」レイムは壁の上に立ち、周りを見た。
するとソージ達の後ろにマントを羽織った者がいた。
レイムは岩の壁から飛び、ソージ達の前に立った。
そして再び剣を構えた。
「誰っ!」
「ほっほっほっ…急に剣を振りかざすとは親からどんなことを教わったのかな…」
喋り方はもうじじい…だけどこの人は私の剣を交わした。
普通の人間だったら避けられないのに…そして失礼だがこんなおじさんに……。
「突然目の前に岩の壁が現れたら、その人を斬るのは当たり前でしょ」と自分なりの回答をした。
「はっはっはっ、なるほど…」とその人には好評だったらしい…。
「で、あなたは何者なの…」とレイムは問いかけた。
すると…。
「ほう、そうだったな…私はラデンリスト・アレルホードじゃ」
知らないな…。レイムはその人を知らなかった。
「私はレイム・レギレス…今は勇者だけど……」とレイムに続いてソージ達も自己紹介をした。
そして突然レイムの方に指をさした。
「おぬし、ナーシングの力を宿しているな…」
ナーシング?なにそれ…。
「知らないようじゃな…ナーシングとはごくまれに宿る力のことじゃ。ナーシングは様々な種族の赤子に宿り、その力は強大なもので使い方を間違えれば国一つの滅ぼすことも可能なのじゃ。そしてその力も様々で破壊力の大きい力だったり、人を思いのままに操る力だったり、様々なものを黒く染め、自分で操れる力など身体能力に依存し、大勢でかかっても倒せない力だったり、あるいは超能力などもあると言われている。ナーシングの意味は無と言われている」とラデンリストはそう言った。
それを聞き終わった、瞬間勇者パーティー全員が思った。
ナーシングの力って破壊の力のことじゃ…。
でも、破壊の力が神以外の人にも宿るなんて知らなかった。
もし、そのナーシングを持つ者達が集まり、反乱とか起こそうものなら大変なことになる。
「ってか、おぬしの名前、レイム・レギレスって言ったな…まさかおぬし…」ラデンリストはじっとレイムを見た。
「あぁ、レイスの娘か、なるほどそれとジルフィスの孫か…ほっほっほっ、たしかに似ている」とレイムに顔を近づけた。
「なんでお母さんと叔父様のことを…」
するとどんどん顔が近くなってきた。
「わしは、いやワシたちはお前の親やじじいたちを教えていた。つまり私はもと神である…じゃがおぬしらみたいな王家の神達ではなく、知恵の神としてワシら二人は教えてきたのだ」と自慢するような口調で言った。
王家の神とは6人の神が地上を治めている。
それが領域である、つまりレギレス家の者たちである。
「なるほど…で今は何をしているのですか」とレイムは老後について聞いた。
「今は一人は神の世界でそしてわしはグランドマスターとして地上を旅している。それとラデンでよい。そして師匠としてワシは今お前と一対一で戦いをしたい」とラデンは言った。
歴代の神達に教えてきた者にとって絶好のチャンスなのかもしれない…。
ちなみにグランドマスターという称号はあらゆる地に赴き、その地を完璧に把握しギルド本部の上層部から認められ、更に上の位地の者だ。
それを、聞いてレイムは少し戦い過ぎる…と思ったが…。
悩んだ結果…。
「いいでしょう。受けて立ちます…」と好戦的性格がまたここで出てしまった。
道を外れて、広い所で戦うことにした。
「行きますよ…」レイムは剣を抜き、構えた。
最初は魔法で様子を見る…剣で前に進むのは相手の攻撃を見てから…。
レイムは剣先を前にした。
その瞬間、レイムの前に壁のように破壊の魔法陣が展開された。
「やっぱりいつも通りだな」と観客席で見ているソージがそう言った。
そしてラデンは「氷結の壁…」するとレイムとラデンの間に氷の厚い壁が地面から出現した。
「全ての貫け、ディスラクシェント!」
その瞬間、破壊の力がラデンに向けて放たれた。
黒い光線が放たれ、レイムとラデンの間にある氷結の壁に当たった。
ズドーンズドーンと最初の音はそうだったが、ガシャンガシャンという音に変わった瞬間、氷結の壁が砕け散り、周りに氷の破片が飛び散った。
そして数本の光線がラデンに当たった。
だが、ラデンの周りには半球のバリアが張られていた。
「最強の光防御魔法だ…次はこっちから行くぞ」ラデンはマントの中から銀色に輝く杖を取り出した。
「上位魔法、漆黒の雷神…」
その瞬間、レイムの上に漆黒の魔法陣が展開され、漆黒の雷が何度も凄まじい音と衝撃で続いた。
「うわぁ、神と言っても女の子なんだからあれはやり過ぎじゃない…」とソージがいい「これはやばいでしょ」とその光景にソピアが驚き、「想像するだけで体が震える」とサリアが体を震えた。
そして戦場では、漆黒の雷止み、衝撃のせいで煙が漂っていた。
すると突然レイムの周りに風が吹き、煙を消し去った。
その風は自然のものではなかった。
煙が消え、レイムが見えるようになった。
レイムの頭上には幾千の黒い羽が集まっていたがそれでもレイムの体にはかすり傷があった。
そして頭上にある幾千の羽がレイムの背中に動き、翼の形になった。
「あんな、魔法みたことがなかったけど、レイムにはかすり傷しかない。私に鎧をまとわせることができるかな」とレイムは剣を構え、突撃する準備をした。
ラデンは杖を構えた。
レイムは深く深呼吸をした…そして地面を蹴り走り出した。
「舞え、破壊の翼!」
その瞬間、背中の翼がラデンの周りを囲んだ。
これで、相手はその中から動けない…。
そして渦を巻き、ラデンを切り刻んだ。
「てぁぁぁぁっ!」レイムはラデンの周りの羽ごと剣を振り下ろした。
幾千の羽はレイムの剣が振り下ろされると跡のように縦に隙間が現れた。
「見事だ…ワシらとは違うやつに剣を教わったな…」と幾千の羽の中から声が聞こえた。
「いいえ。剣術は誰にも習っていません。すべて独学で剣の腕を磨きました」とレイムは羽を消し、剣を鞘に納めた。
「独学じゃと…ほっほっほっ振り下ろすのが普通の奴より少し違うと思ったんだが…自分流儀か……」ラデンも杖をしまった。
「ということはレイムのオリジナル剣術ということ」ソピアは驚きを隠せなかった。
「やっぱりすごいな」ソージはさらに関心した。
「あぁ、我がリーダーだ」
観客席でも盛り上がっていた。
こうしてグランドマスターのラデンリスト・アレルホードとの一対一の戦いは一瞬にして終わった。
「ほう、あの紅蓮の魔王を倒すか…」とラデンは少し考える。
「一つ言っておくが、紅蓮の魔王に手を出したら他の魔王に目を付けられる…最古の魔王第一位の紅蓮の魔王と仲がいい最古の魔王第二位の氷結の魔王が黙っていないぞ。ぶっちゃけ、最古の魔王達は第一位が呼べば、他の魔王達は簡単に配下にすることが可能となり、再び神と魔王の戦闘となるかもしれない」
「最古の魔王第一位…だから最強の魔王と言われているのか、戦争か…」とレイムは自分たちがこれからすることの大きさを改めて考えた。
「だが、今となってはそうはならない。第二位の氷結の魔王は現在、封印されている。そして他の魔王達も現在姿を見せていない。つまり現在の魔王は紅蓮の魔王だけなんだ、これは怪しすぎる他の魔王はどこに消えたのか」
「それは気になりますね。だけど今の目的は紅蓮の魔王を倒すことだけです。そのためだけに戦い続けます」とレイムは心に決めた。
「そうか…うん、おぬしらだったら倒せるかもしれないな。神々が何年かかって初代紅蓮の魔王を倒したんだが、その後継者を必ず、では勝利を願っているぞ」とラデンはゆっくりと道なりに歩いて行った。
「ラデン様、ありがとうございました」とレイム達は深く頭を下げた。
神々の師匠であり、グランドマスターのラデンは地平線に消えていった。
まさか、冒険の途中で驚きの出会いをするとは……。
そしてなぜか会う者達は勝負をして来るのか…これは偶然なのか……。




