第201話:12月の一人・前者:水無月”蒼煉”文百合
ポイントを目指し、あともう少しで場所に到着するジュウロウは辺りを注意を払っていた。なんせジュウロウの周りには濃い霧で一寸先は白く……さすがのジュウロウでも肉眼では見えることはない……。
着々とポイントには進んでいるジュウロウは何かを察知し、《斬理刀》を鞘から抜いた。
そしてポイントの位置まで足を動かし、そして止まった。
「貴殿は我と同じく武士か……しかも貴殿は強いと……」濃い霧から現れたのは、青と水色を混ぜた長い髪の女性だった。
「貴様は何者だ……」ジュウロウは刀を握り、問い掛けた。
「我が名は、12月の一人、前者:水無月の文百合である……貴殿に勝負を申し込む……」と文百合は名刀である刀を抜いた。鍔が金で柄も鞘も金で装飾されている。
自分は前とは違う……別人であるかもしれない。
だがレイム様に長年仕えてきた人間としてジュウロウ・ハリアートは自身の名を名乗った。
「私は、”最破”の一人である右翼の壱【理の支配者】ジュウロウ・ハリアート……いざ、参るッ!」
すると水色と鋼色の混じった刀身を振ると周りの霧が晴れ、文百合の姿がはっきりと見えた。服装は水色の浴衣だった。
右手に柄を握り、もう片手に鞘を握っている。
腰には固定はしていないようだ。
素早さはワ―レストに劣るものの、攻撃力と防御力が凄くそれはジュウロウの筋力もそうだが、神器と長年の使用者であることを意味する。
すると文百合が刀身をこちらに向け、地面を蹴った。予想はしていたが、素早いッ――身軽に剣技を繰り出すのであれば、苦戦もいい所だがジュウロウはそんなことはない。
世界中の剣士の頂点とも言えるだろう。
初手から突っ込んでくるとは、大胆な戦略……いや戦略を考えているのかは不明だが、ジュウロウは最速の突きの技を構えた。
「はァァァッ!」縦の力に強い刀……両手で柄をの握り、縦に振る攻撃は最大の攻撃力を有する。
だがその振りは地面まで刀身が届くように振る者はそんなことは思っていない。
――刀身が届かない高さまで腰を落とし、突きを入れるッ!
「ふッ――」だがこの体勢は熟練の剣士であれば、見抜けるもので文百合はそれに気づき、避けようと片足を崩したがすぐに体勢をなおし、ジュウロウと文百合は無傷ですれ違った。
「貴様は大胆なことをするのだな……相手が剣を持つ者でも力がそれ以外あったらどうするつもりだったんだッ……これでは初手からお前は斬られていたぞ……」と今の姿は青年であるジュウロウは同い年と思われる文百合に投げかけた。
「だけど貴殿は攻撃をしなかった……」
「あぁ、俺にはこれしか力はないからな……」と《斬理刀》を前に出した。
「んふッ……」と文百合は鼻で笑った。
「まさか、同じだったとは……私もそうなんだ、ジュウロウ・ハリアート」文百合は剣先を向けた。
するとその刀身は青い炎に包まれた。
その刀は、どの炎にも当てはまることはなく、その色は青く、紅蓮のように燃え盛る……。
風・炎・水・土の基本の4つのエレメントの中から極稀に出現するのが、無のエレメントと基本から変異した派生の者であった。
彼女はそれが理由は世界に嫌われ、そして闇に身を落とした。握る刀は力と彼女とともに変化した刀。
その名は、《異刀・蒼煉刀》
――全てを飲み込み、赤き炎より美しい力である。




