第159話:精霊の涙
「あぁぁぁぁぁっあぁぁぁぁぁぁぁっ!」火花が世界中に舞う今……大戦が終結した。
森の妖精呼ばれる緑色の物体を抱きしめて精霊最強と呼ばれた少女は泣きじゃくれていた。
その感情は悲しみ、悔やみ……そんなものが心の中を暴れ回っていた。
あれが死んだことはリアルタイムで心に感じた。
話し相手の中かもしれないが、泣くだけの感情を奴に向けていた。
死んだ奴に何を投げかけても戻ってくるはずがない……自分も戦えれば……。
「あり…がとう……」
「頂点…では敵である私に向かってそんなことを……舐められたものだな……」と嘲笑う。
「戦いは避けたいのだが……」とレイムは返した。
だが、ポーリンの目つきは鋭さを増した。
「そうか……では頼む……私と戦ってくれ…」と向こうからの願いだった。
あの時は一戦も交えたことがなかった、今奴に殺されても何にも自分の中には芽生えないだろう。
「願いですか…そんなこと……」とレイムは動揺した。
あぁ、そんなに落ちぶれていないようだ。
「では頼む…私を殺してくれ……」と少女は誠の願いをレイムに伝えた。
そんなこと……。
ー死を願う者のことは分からないが、何故なのか……。
少なからずレイム自身も命というものを奪ってきた身……だがそんな重みも殺しははじめてだった。
「そんなことはできない……そんなことを言われるなんて思わなかった……。私は帰る……」とレイムは戦う気がないから、時間の無駄だとそう思った。
世界七神皇帝に選ばれた者があんなことを言うなんて思ってもいなかった。
レイムとソージ達はそのまま去っていった。
彼女のことなんてレイム達にはわからないが、自分はちゃんとわかっていた。
「君がそんなことを思っていたなんて……」とジュウロウの時にも聞こえてきた声が響き渡った。
ポーリンは辺りを見渡した。
坂の下には3代目破壊の神レイム・レギレスの姿がいた。
「レイム……生きてたのか………」とポーリンは一歩一歩と近づいた。
「生きていた……というか、あの時私は死んだ……今はロナだ……」とレイムはそう言った。
「なっ……」とポーリンは理解を追いついていなかった。
「そんなことより、私は行く……私では見えなかったものを見せてくれる……だからついて行く……。君もいつまでも悔やんでないで…好きなように生きな……」と言い捨て、レイムは姿を消した。
もう3000年前の話……そんなこともう誰もが忘れてしまうだろう……だからいいのだ。
そんなものは忘れた方がいいことなのだ……。
ポーリンは風が吹く緑を見つめ、大きく息を吹いた。
「わかった…よ……」と涙を流しながら、そう呟いた。
その涙が地に落ちると、新たな芽を宿すのだ。




